2012-01-01から1年間の記事一覧

心因性疼痛の診断と治療

久保千春 心因性疼痛の診断と治療 麻酔科学レクチャー 2010;2(4):606-612 国際的に最も重要な慢性疼痛の治療法となっているのが、認知行動療法です。これは、痛みが単に潜在する組織病変のみでなく、認知、感情、行動といったものによって影響を受ける複合し…

慢性疼痛治療のポイントと今後の展望 座談会

慢性疼痛治療のポイントと今後の展望 座談会 Bone Joint Nerve 2012;2(2):339-355 牛田 厚生労働省研究班の慢性痛の調査 運動器の慢性疼痛15%、慢性疼痛は高齢者に多いと考えてきたが、今回の調査では若い世代が多くて、労働者でなく、事務職などの専門職に…

CRPSに対する生体内再生療法

稲田有史、中村達雄 CRPSに対する生体内再生療法 Bone Joint Nerve 2012;2(2):333-338 CRPS 1. 直接神経障害 2. 深部組織障害(特に筋膜炎) 3. 末梢総和障害 1,2を含むによる局所所見を報告、その末梢病変を退治させることによって、異痛症、拘縮、振戦など…

変形性膝関節症の疼痛発生機序

池内昌彦 変形性膝関節症の疼痛発生機序 Bone Joint Nerve 2012;2(2):317-323 本邦 レ線で変形性膝関節症と診断されるものが2530万人、うち症状を有するものが780万人 診断が関節構成体の病理学的変化をもとに行われるのに対して、治療は関節の病理と直接的…

河田浩、細井昌子 慢性疼痛と心のケア Bone Joint Nerve 2012;2(2):309-315

まずは患者―医師間の信頼関係が最も重要である。そのうえで、患者に寄り添い、できうる範囲でゆっくり傾聴する態度が必要であろう 実際に痛みを感じているのに、それに見合うだけの器質的な疾患をみとめないために病気と認められず、心理的な辛さが表出でき…

河田浩、細井昌子 慢性疼痛と心のケア Bone Joint Nerve 2012;2(2):309-315

医学的な観点の痛み、文学的・言語的観点での痛み 遷延化した慢性疼痛症例の診療にあたり、患者が体の痛みを通じて訴えている内容について時間をかけて詳細に分析していくと、病院において時間をかけて詳細に分析していくと、病院において患者と呼ばれている…

慢性疼痛に対する理学療法

村上孝徳 慢性疼痛に対する理学療法 Bone Joint Nerve 2012;2(2):301-307 慢性疼痛の定義 国際疼痛学会 2007 治療に要すると期待される時間的枠組みを超えて持続する痛みあるいは進行性の非癌性疾患による痛み 理学療法は本質的な鎮痛効果を期待するものでは…

非視床性疼痛機構における慢性疼痛関連可塑性 前帯状回

山下哲、成田年 非視床性疼痛機構における慢性疼痛関連可塑性 前帯状回 Bone Joint Nerve 2012;2(2):253-258 脊髄視床路 外側 疼痛閾値そのものに関与 内側 痛みの不快な感覚の誘発に関係 前帯状回は、扁桃体と密接な双方向の線維連絡があることから、情動お…

非視床性疼痛機構における慢性疼痛関連可塑性

高橋由香里、加藤房夫 非視床性疼痛機構における慢性疼痛関連可塑性 Bone Joint Nerve 2012;2(2):249-252 痛みの経路 第一 外側経路 痛みの感覚・弁別的要素 第二 内側経路 痛みの情動的要素 第三 腕傍核のシナプスだけを介して直接的に侵害受容情報を扁桃体…

下行性制御機構を標的とした薬物

田辺光男、高須景子、大内壮一郎、小野秀樹 下行性制御機構を標的とした薬物 Bone Joint Nerve 2012;2(2):239-247 ガバペンチン、プレガバリンは脳組織中の電位依存性Ca2+チャンネルα2δ-1サブユニットへ特異的に結合するため、末梢から脊髄後角へと痛みを伝…

下行性制御機構:ノルアドレナリン

古江秀昌、加藤剛、馬場洋 下行性制御機構:ノルアドレナリン Bone Joint Nerve 2012;2(2):231-237 最終的には脳幹に存在する青斑核(ノルアドレナリン)や縫線核(セロトニン)から下行する線維によって、痛みの中枢への入り口である脊髄後角において、末梢…

下行性疼痛制御機構におけるセロトニンの役割

井辺弘樹、仙波恵美子 下行性疼痛制御機構におけるセロトニンの役割 Bone Joint Nerve 2012;2(2):223-229 PAG(中脳中心灰白質)から脊髄への直接の投射はほとんどなく、RVM(rostal ventromedial medulla; 吻側延髄腹内側部),DLPT(dorsolateral pontomesenceph…

脊髄メカニズム

谷口亘、吉田宗人、中塚映政 脊髄メカニズム Bone Joint Nerve 2012;2(2):217-222 C線維 後角 第I,II層のニューロンに入力 視床を経て大脳皮質の感覚野 痛みの弁別 Aδ線維 第I,II層だけでなくV層にも入力 視床を経て大脳皮質の感覚野、視床下部や脳幹にも入…

慢性疼痛の形成機序に関する最新の研究動向

池田亮、加藤総夫 慢性疼痛の形成機序に関する最新の研究動向 Bone Joint Nerve 2012;2(2):209-215 扁桃体は、脳内情動処理機構の中心的役割を担うだけでなく、「痛み」入力そのものが視床・皮質を介さず直接伝達される核として重要である 記憶や学習はこの…

丸田俊彦 「痛み」の心理的側面 ー特にpain behaviorについて 精神医学 1976;18(10):1059-1064

痛みとは何か 第一に「痛いという知覚」 知覚としての痛みは、完全に、永久に個人的な体験であって、他人の痛みを推測することはできても、感じることはできない。患者の訴え、そして一挙一動から、臨床の診断を下すことは多々あり、あたかも患者の訴える痛…

牛田享宏 我が国における運動器慢性疼痛の診療体制 Locomotive pain frontier 2012;1(1):24-27

急性痛 痛みには必ず生物医学的な原因があり、その原因を物理的治療法で取り除けば、痛みは寛解し、患者の機能障害は減少する」という生物医学モデル(biomedical model)と呼ばれる考え方に基づいている 長引く運動器の痛みにおいては、罹患部位の器質的異常…

運動器慢性疼痛の診療 現状をめぐる問題

座談会 運動器慢性疼痛の診療 現状をめぐる問題 Locomotive pain frontier 2012(1):5-13 山口 William Osler先生が述べている、「患者がどのような病気をもっているか知ることより、どのようか患者が病気をもっているかを知ることが最も重要」 西田 痛みに対…

丸田俊彦  慢性の腰痛は精神科疾患か 医学のあゆみ 1988;147(14):1174-1176

痛みは大きく2つの要素に分けることができる 主観的な知覚としての痛み 完全に、永久に個人的な体験 客観的に観察可能な”反応”としての痛み 1 頻脈、散瞳、発汗といった反射的・生理的は反応 警告刺激としての痛みに対する生態の防御反応 主として急性痛 2 …

慢性疼痛への理学療法―がん症例

増田芳之 慢性疼痛への理学療法―がん症例 PTジャーナル 2012;46(2):131-136 Saunders 禅の痛みを全人的疼痛(total pain)と捉え、4つの因子があるとした。身体的疼痛physical pain, 精神的疼痛 psychological pain, 社会的疼痛 social pain, スピリチュアル…

慢性疼痛への理学療法―脳卒中と神経障害

白井誠、碓井千晴、篠田陽平、田中孔明、望月英樹 慢性疼痛への理学療法―脳卒中と神経障害 PTジャーナル 2012;46(2):123-130 患者の痛みの多面的評価 「痛み表現」「痛みに対する反応」「生活・人生における痛みの影響」の3つの側面について評価を行う 痛み…

櫻井博紀、牛田享宏 慢性疼痛への理学療法 PTジャーナル 2012;46(2):117-122

運動器の痛みの要因は、画像診断で判別できるようなタイプの構造的な異常によるものよりも、機能的な異常によるものの関与が多いことを示唆 機能的な痛みが出現する部位では、骨関節靭帯とともにった器官だけでなく、筋が大きな役割を演じていることが推察さ…

住谷昌彦 慢性疼痛のメカニズムと最新治療 PTジャーナル 2012;46(2):111-116

pain matrix S1,S1と視床(とおそらく島葉後部) 疼痛の識別に関連 前帯状回と島葉前部 情動的要素に関連 前頭前野 疼痛にまつわる高次機能に関連 神経障害性疼痛時に特にS1の体部位再現地図(somatotopy)の機能再構築(reorganization)が観察され、罹患部位に…

大道裕介、牛田享宏 慢性疼痛への包括的アプローチ PTジャーナル 2012;46(2):101-109

患者はその痛みのみならず痛みにより引き起こされた苦痛を含めて痛みとして訴え、それを取り除いて欲しいと願う 痛みは伝達とこの不快情動の2つをもって警告信号としての役割を果たす 人間は、「痛い感覚」と不快情動を伴うものである痛みがなくなることを…

菊地臣一 次世代を担う君達へ 私の歩みから次世代へのメッセージ J Spinal Research 2012;3(3):S220

「何になったかではなく、何をしたか」に人生の価値観をおく どんな立場、役割であってもプロフェッショナリズムの意識を持ち続ける どんな出会いが人生の転機になるかわからない。だからこそ全ての出会いを大切にする必要がある プロとして良い仕事は、双方…

EZRでやさしく学ぶ統計学

EZRでやさしく学ぶ統計学作者: 神田善伸出版社/メーカー: 中外医学社発売日: 2012/04/05メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 16回この商品を含むブログ (3件) を見る 本書は疼痛関連ではなく、統計の本 「かつてのStatViewのようにマウス操作だけで簡単に解…

「はい、でも」ゲームに対し鍼灸治療の心理療法的側面を利用して治療

近藤哲哉 「はい、でも」ゲームに対し鍼灸治療の心理療法的側面を利用して治療をおこなった線維筋痛症の症例 心身医 2012;52:351-321 10年以上線維筋痛症とその周辺症状に改善のみられなかった患者の鍼治療において、著明な疼痛顕示行動が治療の妨げになって…

慢性疼痛と不安/睡眠障害:痛み刺激による脳内感作

葛巻直子、成田年、新倉慶一、鈴木勉 慢性疼痛と不安/睡眠障害:痛み刺激による脳内感作 日本緩和医療薬学雑誌 2009;2:33-37 疼痛刺激により、疼痛が慢性化ならびに複雑化することの原因の一つとして、情動行動を調節している上位中枢が疼痛刺激により変化…

水村和枝 筋・筋膜性疼痛 Practice of Pain Management 2012;3(1):30-24

筋・筋膜性疼痛の特徴 遠隔組織へ関連痛が生じることがある 自発痛よりも痛覚過敏(圧痛、運動時痛)が多い 運動機能への影響 遅発性筋痛症をとっても、それが筋由来なのか、筋膜由来なのか判然としない ヒトをつかった実験では筋膜のほうがより大きく関与し…

細井昌子 九州大学病院心療内科 Practice of Pain Management 2012;3(1):38-48

池見酉二郎 人間のさまざまな社会的な部分を取り去っていくと、その中心には人間の本当に辛い部分があり、それはまるで玉ねぎの皮を剥くとでてくる涙のようなものだ 当科では、慢性疼痛の患者さんに対して、認知行動療法、交流分析、自律訓練法を3本柱にし…

one more JIM

one more JIM JIM 2011;21(12):1015 慢性痛の患者のドクターショッピングを止めるには 患者の痛みの訴えを、先入観なく受け止め傾聴する。”私はあなたを本気で理解しようとしている”という姿勢を患者に伝えることが出来て始めて治療関係(ラポール)が形成さ…