田辺光男、高須景子、大内壮一郎、小野秀樹 下行性制御機構を標的とした薬物 Bone Joint Nerve 2012;2(2):239-247
- ガバペンチン、プレガバリンは脳組織中の電位依存性Ca2+チャンネルα2δ-1サブユニットへ特異的に結合するため、末梢から脊髄後角へと痛みを伝える一次求心線維の脊髄側終末におけるこの特異的結合により脊髄後角二次ニューロンへの神経伝達が抑制され、神経障害性疼痛の緩解に至ると考えられてきた
- ガベペンチンの神経障害性疼痛緩解作用には下行性ノルアドレナリン神経が関与し、特に上位中枢を介する作用は下行性ノルアドレナリン神経を必要とする。さらに、ガバペンチンの脳室内投与前にα2-アドレナリン受容体アンタゴニストのヨヒンビンを脊髄内投与しておくと神経障害性疼痛緩解作用がほぼ抑制されたことから、上位中枢に作用したガバペンチンは下行性ノルアドレナリン神経を活性化し、ノルアドレナリンが脊髄内でα2―アドレナリン受容体に作用して疼痛緩解効果をもたらす。
- ガバペンチンが神経障害後の青斑核ニューロンを脱抑制して下行性ノルアドレナリン神経を活性化する可能性を強く示している
- ガバペンチンの上位中枢を介する神経障害性疼痛緩解作用も上位中枢のPKAに依存することが示めされ、青斑核ニューロンにおいてGABA性神経伝達をPKAに依存して抑制することが、ガバペンチンの下行性ノルアドレナリン神経活性化を介した神経障害性疼痛緩解作用を説明する十分なシナプスレベルでの採用貴女であると考えられる
- このことは、下行性ノルアドレナリン神経―α2アドレナリン受容体活性化の下流において、アセチルコリンが放出されてムスカリン受容体を活性化するシグナル経路が機械アロデニアの緩解に関与することを示している
- 少なくともガバペンチンで活性化される下行性ノルアドレナリン神経の脊髄内下流シグナルにおいて、α1-アドレナリン受容体は鎮痛効果に寄与しないと考えられた
- ミルナシプランにより再取り込みを抑制されたノルアドレナリnやセロトニンがLTP誘発後や神経障害後にシナプス伝達効率が増加した疼痛性神経伝達を抑制すると考えられる
- タペンダドール 急性疼痛に対する鎮痛作用にはμ―オピオイド受容体アゴニスト作用が、オピオイドが奏功しにくい慢性疼痛に対する鎮痛作用にはノルアドレナリン取り込み阻害によるα2-アドレナリン受容体活性化作用が寄与すると報告されており、慢性疼痛治療での有効性が期待させる