2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

慢性疼痛はどこまで解明されたか

作家の高村薫が医療について地方新聞に寄稿している。ここで引用されているが、秀逸。非医療者の分析であることに価値がある。 いま起きているのは、医師の絶対数の不足である。 私たちの誰もが等しくその高度医療を求めるようになったことが、この医療費の…

p55 熊澤孝朗、山口佳子 痛みの学際的アプローチへの提言

長期間持続的に痛覚系が働いた場合に痛覚系が変容を来たし、痛みの原因であった病巣が治癒した後にも痛みを発し続けることがある 国際疼痛学会の痛みの定義 不快な感覚性、情動性の体験であり、それには組織損傷を伴うものと、そのような損傷があるように表…

p43 細井昌子 複雑系の病 慢性痛を治療する

近代医療の大前提である「痛みの原因を除去すれば痛みがなくなる」という発想で、医学的に、しかも良心的に対処されても痛みが改善しない症例がかなりの数世の中に存在する。 疼痛の定義 痛みとは組織の実質的あるいは潜在的な障害に結びつくか、このような…

慢性疼痛はどこまで解明されたか 2

菅原努監修 慢性疼痛はどこまで解明されたか 昭和堂 2005 ISBN:4812205085 p19 中井吉英 慢性痛と患者の心理 1982 に本慢性疼痛学会発足 慢性疼痛 単に生物学的な痛みだけでなく、心理的、社会的、行動的要因が加わる。癌だと霊的なものも加わる 事故当初は…

菅原努監修 慢性疼痛はどこまで解明されたか 昭和堂 2005 ISBN:4812205085 p3-17 増田豊 ペインクリニックでの慢性疼痛予防 慢性疼痛 炎症状態が集結した後の痛み 制御可能な痛みから、制御できない痛みに移行する 末梢性感作 中枢性感作 低頻度刺激によって…

ペインクリニック6

池田祥子、塩谷正弘 疼痛患者の教育指導とその実際 ペインクリニック 2007;28:S258-265 慢性疼痛は身体的、精神的、社会的、行動的なプロセスを含む複雑な経験の一つとして知られている。時間の経過の中で、痛みが生体への警告信号への役割を超え、身体感覚…

ペインクリニック5

高橋ク美子 慢性疼痛とリハビリテーション ペインクリニック 2007;28:S224-232 慢性疼痛患者の特徴で医療への過剰な依存 長期プログラムの対象者 錯綜した心理社会的問題のため生活が破綻している 本人の未成熟な自我が競争社会に直面し、対応困難となった結…

本田哲三 慢性疼痛とリハビリテーション  ペインクリニック2007;28:S205-215

認知行動療法にいたる疼痛理論の変遷 1964 デカルト 疼痛は感覚的体験の一つ。その程度はおおむね組織障害の程度に一致する 1959 Engel 器質的原因に乏しい痛みの訴えを心因性疼痛と名付けた 1965 Melzack & Wall gate control theory 疼痛体験は単に末梢か…

ペインクリニック4

信太賢治、増田豊 神経因性疼痛に対する神経ブロック療法 ペインクリニック 2007;28:S114-119 1994 IASPにおけるカウザルギーCRPS type IIの診断基準 神経損傷後に生じた症候群であること。持続する疼痛あるいはアロディニア痛覚過敏を生じるが、その範囲は…

ペインクリニック3

村川和重、森山萬秀、佐々木健、植木隆介 神経因性疼痛に対する神経ブロック ペインクリニック 2007;28:S91-100 神経因性疼痛においては、損傷神経からの痛み感覚に関連する末梢神経の活動性に侵害受容器の機能は必ずしも関係しない。 神経因性疼痛に関わる…

中井吉英 ペインクリニシャンのための心身医学的知識 ペインクリニック 2007;28:S82-89

筆者は慢性疼痛を器質的原因の除外された痛みでなく、器質的要因、機能的要因、心理的要因の3要因が重複した痛みであると考えている 心理的要因 一次的要因 慢性疼痛に陥りやすいpersonality 神経症的性格の人が痛みに罹患すると2次的要因として神経症的な…

横田敏勝 慢性疼痛の機序 ペインクリニック 2007;28:S3-8

慢性痛は生理学的な意義を持たず、無益である 末梢神経のAβ線維の伝達物質はグルタミン 多くの慢性痛で、触刺激によるAβ線維の興奮が痛みをもたらすアロディニアが見られるが、これは脊髄後角侵害受容ニューロン、特に広作動域ニューロンの反応性亢進による…

ペインクリニック

雑誌 ペインクリニックのvol28 2007 別冊春号のテーマは慢性疼痛管理

熊澤孝朗、山口佳子 慢性痛症の取り扱い ストレスと臨床 2005;24:34-37

アメリカ議会 2001年からの10年を痛みの10年とすることを採択 原因病巣が治癒しているにもかかわらず痛みを発し続けることがある。これは神経系に出来上がってしまった可塑的な歪みによって引き起こされる痛みであり、痛覚受容器の興奮とは関係なく起こ…

谷川浩隆 腰痛症にみられる筋骨格系の慢性疼痛 ストレスと臨床 2005;24:12-15

機能性身体化症候群 functional somatic syndrome 線維筋痛症や過敏性腸症候群など明らかな器質的異常がないにもかかわらず日常生活に著しい機能障害をきたす症候群 痛むうつ painful depression うつや焦燥感などの気分不調を痛いという表現に置き換えてい…

ストレスと臨床

medical onlineより雑誌 ストレスと臨床で、慢性疼痛の関連論文を手に入れた。残念ながら2006/8で休刊のもよう。村上正人、松野俊夫 慢性疼痛 ストレスと臨床2002;12:25-29 国際疼痛学会の痛みの定義 組織の実質的あるいは潜在的な障害に結びつくか、このよ…

本田哲三 慢性疼痛のリハビリテーション リハビリテーション医学 1997;34:405-409

デカルト Descartes 1647 疼痛は感覚的経験の一種であり、その程度は概ね組織損傷の重症度と一致する Fordyce 疼痛行動に注目(顔をしかめるたり職場を休む、といった痛みを表現するような行動の総称) 患者が執拗に痛みを訴え続けるのは疼痛行動が強化され…

慢性疼痛は急性疼痛とは病態が大きく異なる。ニューロンの変性やイオンチャンネルやシナプスにおける様々な変化といった生理的な違いのみならず、生理心理環境の3つのシステムによる悪循環の連鎖が病態を形成する点が慢性疼痛の特徴の一つである。 慢性疼痛…

水野泰行、福永幹彦、中井吉英 慢性疼痛患者とその他の心身症患者との心理的特徴の比較 慢性頭痛 2004;23(1):193-199

熊澤孝朗 学際的痛みセンターの設立をめぐって 慢性疼痛 2003;22(1):35-38

慢性痛は、急性痛が単に長引いたものでない 慢性痛は、痛み系に生じた、タンパクレベルから神経回路の構造レベルも含めた可塑的な変容の産物 慢性痛は、痛み系に新たに生じた病気 慢性痛の発生には、文化、社会制度、医療制度など、人間のあらゆる営みが深く…

慢性疼痛3

内田 樹 自己利益追求ために人々があまりに要求をつり上げ、他者に対して過度に不寛容になると、社会システムが機能不全に陥ることがある。 斎藤清二 慢性疼痛とナラティブベイストメディスン 慢性疼痛 2003;22(1):9-15 NBM 1998 グリーンハル、ハーウィッツ…

横田俊勝 慢性疼痛 2002;21(1):9-21 滋賀県立医大生理学名誉教授

痛みの定義 IASP 痛みは、実質的または潜在的な組織損傷に伴う、あるいはこのような損傷を表現する言葉を使って述べられる不快な感覚情動体験 この定義には下記の注釈がつく 痛みを引き起こす刺激は、組織を損傷しやすい。人は生涯の早い時期の体験を通じて…

慢性疼痛2

セルジオ越後 朝日新聞 2008/2/7 12版 問題の本質は、「日本はなぜ勝てなかったのか」ということにある。ジャッジミスがあっても負けないほどの実力をつけるべきで、そのために何をしてきたか、ということが本来問われるべきである。 中東の王族の力の大きさ…

慢性疼痛1

ずばり慢性疼痛という雑誌もあり、日本慢性疼痛学会もある。麻酔科ペインクリニック系の学会か?medical onlineに登録されているのでバックナンバーはとりよせやすい。まさにmedical onlineさまさまである。 中島節夫 行動痛と慢性疼痛 慢性疼痛 2000;19(1):…

谷川浩隆 慢性疼痛にたいするリハビリテーション 痛みと臨床 2007;7(1):65-70

慢性疼痛 心理社会的要因が深く関与 患者は自分自身の身体症状の原因が器質的なものであると強く確信している 心療整形外科 心因性の運動器機能障害について、心身医学的な視点からのアプローチが整形外科でも必要とされている 疼痛により筋緊張が高く、関節…

痛みと臨床7

白土修 痛みに対する運動療法 腰痛症における適応と成績 痛みと臨床 2007;7(1):48-54 リハの対象 腰椎における腫瘍、感染、骨折(以上red flags)を除外した非特異的腰痛 運動療法の目的は下肢体幹の柔軟性、筋力、筋持久力、神経筋協調運動、心循環系機能の…

痛みと臨床6

川井康嗣 痛み診療における痛みの評価手順 痛みと臨床 2006;6(3):296-303 評価する痛みは、警告としての痛みではなく、不必要な痛みである 痛みには感覚としての痛みと情動体験としての痛みがあること、また、痛みのもたらす苦痛は全人的苦痛(身体的苦痛、…

痛みと臨床5

波平 恵美子 医療人類学からみた痛み2 痛みを伴う人の生活世界の変化とその過程 痛みと臨床 2006;6(2):235-240 慢性の痛みを患う人は、痛みが生活のすべてになり経験のすべてになる。そのため、自分がそれ以前には社会的世界とつながっていたはずの経験的世…

久保千春、清水由江、細井昌子 うつを伴う痛みへの心理的アプローチ 痛みと臨床 2006;6(2):222-227

うつ病による疼痛には下行性疼痛抑制系の機能低下が関与している 抗うつ薬は下行性疼痛抑制系の賦活化 心療内科での心身医学的診断 生物医学的な器質的および機能的病態 不安抑うつなど情動の変化 人格傾向および人格障害発達障害の有無 痛みに対する認知と…

痛みと臨床5

波平恵美子 医療人類学から見た痛み1 多様な痛みへの意味付けと対応 痛みと臨床 2006;6(1):124-129 痛みは人間にとって普遍的な感覚であるが、それについての意味付けは文化によって異なるし、もしかしたら感覚の閾値にも差があるかもしれない 痛みは身体感…