松平浩
痛みの遷延化の規定因子として”破局化思考 pain catastrophizing”の存在が知られる。痛みの破局的思考は、反復(何度も痛みを考えてしまう)・拡大視(痛みを必要以上に強い存在と感じる)・救いのなさ(痛みから逃れる方法がないと考える)の3要素から成り、こ…
非特異的(腰痛)たる所以として、通常の画像検査が基本的に痛みの原因を語らず、汚予測にもならないことが挙げられます。 病因の正確な把握は難しいものの、腰痛、とくに慢性腰痛は「生物・心理・社会的疼痛症候群」であるという認識に変換されました。 画…
松平浩 知っておきたい非特異的腰痛の知識 疫学的なglobal知見を踏まえて ペインクリニック 2014;35(5):625-632
2009/1 本邦における慢性疼痛の実態を把握する目的でおこなったインターネット調査 20-79歳の20044名 慢性疼痛の点有病率 22.9% 過去一年間に医療機関や整骨院等へいったのは55.9% 病院・診療所受診者における治療満足度では、45.2%が不満 EQ-5Dの国民平…
非特異的(非特異的腰痛)たる所以として、画像検査が基本的に痛みの原因を語らず予後予測になりにくいことが挙げられる。 一方、腰痛の慢性・難治化に強く影響する危険因子の多くが心理社会的要因であることが明らかになり、病因の正確な把握は難しいものの…
現状の画像検査における形態学的異常の有無では痛みの原因を説明しきれない。言い換えればクリアに視覚的に捉えきれない運動器疼痛に関し、姿勢や動作との関連性が明確で一貫性があるものを運動器dysfunction(機能的な不具合)と定義することを、われわれは、…
腰痛の慢性・難治化に強く影響する危険因子の多くが心理社会的要因であることが明らかになり、病院の正確な把握は難しいものの、腰痛は「生物・心理・社会的疼痛症候群」であるという認識に転換した。 著者の行なった前向き疫学研究 過去一年間腰痛がなかっ…
従来腰痛は外傷性事象や機械的ストレスが原因で起こる損傷モデルが前提であった。しかしながらこのモデルで説明しきることには限界があり、心理社会的要因の関与が重要視されるようになった 最近、重篤な基礎疾患のない非特異的腰痛に画像検査をおこなっても…
椎間板変性、ヘルニア、狭窄、骨棘、すべりといった以上と説明しがちな画像所見は、腰痛症状の有無にかかわらず一般集団にみられ、すくなくともこれらが重要視すべき腰痛との関連要因とはいえず、特異的腰痛が否定されれば、画像検査を慣例的に行なっても、…
痛み刺激が加わった時にも、腹側被蓋野に活動電位の群発射がおこり、十分量のdopaminが側坐核などに向けて放射される。側坐核ニューロンが興奮すると脳内μ-opioid受容体も活性化し、下行性痛覚抑制系を介して脊髄後角レベルで侵害情報が抑制される。誰の脳に…
腰痛の原因、慢性・難治化する危険因子とも、脊椎への負荷にかかわる問題が主因の場合、すなわち脊椎dysfunctionと、心的ストレスが主因となる場合、すなわち脳dysfunctionに分けて考えると理解しやすい。脊椎と脳のdysfunctionは共存しうるが、臨床医は種々…
我が国での産業衛生的アプローチは、画像所見を参考にしつつ人間工学的問題を主に対策を講じているのが現状であり、心理社会的要因にも十分に配慮したうえで危険因子を探る目的の前向き研究はほとんどおこなわれてこなかった そこで我が国における勤労者の「…
筋・骨格系由来とされる痛み愁訴(musculoskeletal pain:筋・骨格系疼痛)は、必ずしも器質的要因が明確化できるとはいえず、腰痛を主とする慢性疼痛は生物心理社会モデル(biopsychosocial model)が適応されるようになって久しい。つまり、心理社会的要因は、…
痛みが難治化する過程を解釈する代表格として恐怖回避モデル(fear-avoidance model)がある。ヒトは痛みを体験すると、深刻な状況でないかと悲観的解釈をしやすく、そのため痛みを増強させる可能性のある行動は回避するようになる。 腰痛は疼痛愁訴の中でもっ…
評価 ”怒り”の感情を強く抱いている患者は間違いなく心因性要素が強い 典型的な心因性要素が強い患者は、自分の想いを「この痛みさえなければ」「この痛みが完全になくなることを強く望んでいる」などと破局的に表現しがちである。”全か無か思考” 恐怖回避思…
著者らの行った疫学調査 PACE survey 2009.jp pain associated cross-sectional epidemiological survey) JOB study (Japan epidemiological research of occupation-related back pain study) PACE surveyのまとめ 国民生活基礎調査どおり、痛み愁訴の中で…
ほねのずれ(すべり)やヘルニアなどの画像上の異常所見があっても、腰痛で困っていないひとはいますし、逆に、腰痛の経験があっても画像所見は正常な場合もあります。すまり、画像上の異常所見は必ずしも痛みを説明できないことが理由の一つです。よって、…
脊椎には椎間板、神経組織、関節(椎間関節)、種々の靭帯、筋肉等痛みを発しうる組織が数多くあり、これらのどこが原因かは特定できません(非特異的な痛み)。よってレントゲン検査はあまり役に立ちません。しかし、どこが原因であれ、損傷部位の炎症が警…
例えば腰痛の犯人は椎間板だと信じるほうが、我々整形外科、脊髄外科医にとって治療をしやすいのですが、、椎体間を固定したり、人工椎間板(日本では使用できない)に置換したりしても、必ずしも患者さんを幸せにできていないのが現状です。 非特異的腰痛は…
欧米では、作業関連性腰痛が社会および経済に与える影響について多くの研究が行われてきた。これまで、腰痛の発症原因に関する研究では、身体的負荷および人間工学的問題がより重点的に検討されてきたが、いくつかの前向き研究の結果から、仕事の満足度や精…
JOB(Japan occupational research of occupation-related back pain) study ベースラインデータ 首都圏42事業所約3万人の他業種の勤労者に調査依頼 書面で同意を取得できた 9307人(男 7720、平均年齢 42歳) 一年後の追跡調査 3811人 2年後 3194人 仕事…
Snook SHは現代社会において大きな問題は、”low back pain(LBP)”ではなく、”low back disability(LBD)”であると述べている 欧米ではbiomedical modelを前提とする人間工学的アプローチに主眼をおいた腰痛対策が立ち行かなくなった背景から心理・社会的要因が…