葛巻直子、成田年、新倉慶一、鈴木勉 慢性疼痛と不安/睡眠障害:痛み刺激による脳内感作 日本緩和医療薬学雑誌 2009;2:33-37
- 疼痛刺激により、疼痛が慢性化ならびに複雑化することの原因の一つとして、情動行動を調節している上位中枢が疼痛刺激により変化している可能性が示唆されている
- 複雑化する痛みのメカニズムや疼痛と情動行動との関係性に着目した場合、その機構について脊髄だけでは説明できないことがほとんどである
- 痛覚の中枢性伝導路
- 脳部位への疼痛伝達による情動障害の発現
- 帯状回、扁桃体ー大脳辺縁系
- 帯状回 情動・感覚の処理ならびに本能行動の制御に関与
- 扁桃体 本能・情動による行動の中枢
- 扁桃体外側 体性痛情報が入り、負の情動反応を引き起こす
- 疼痛刺激はさまざまな脳部位に到達し、不安障害や抑うつ状態なども引き起こすが、抗うつ薬は脳内に多く多くの作用点をもつがゆえに、そうした慢性疼痛によって生じる不安障害や抑うつ状態に奏功する可能性が示唆された
- 慢性疼痛下では、このように異なる脳部位を介して、疼痛が多次元的に修飾されることにより、疼痛の難治性化ならび慢性化が惹起される可能性が示唆される
- 慢性疼痛時の帯状回における「痛みの認知」には、持続的な帯状回ニューロンの活性化が予想される
- 神経障害性疼痛により活性化した帯状回領域のアストロサイトは、シナプス伝達を変化させ、神経伝達効率に影響を与え、その結果、「脳内感作」を誘導し、痛み記憶を増感させたり、不安などの情動を引き起こす原因となりうる可能性が考えられる
- 神経障害性疼痛により抑制性GABA神経系の伝達効率が低下している可能性が考えられる