2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ドパミンシステムと痛み

紺野慎一 ドパミンシステムと痛み 臨整外 2011;46:343-346 慢性疼痛患者に対する整形外科医の果たすべき役割は非常に大きいが、患者の期待に十分にこたえていないのが現状といえる 中脳ドパミンシステムとは、腹側被蓋野(VTA)から、側坐核(NAc)や腹側淡蒼球(…

慢性疼痛の評価と治療における薬物療法の位置づけ

川井康嗣、大賀美穂、原田英宣、又吉宏昭、松本美志也 慢性疼痛の評価と治療における薬物療法の位置づけ 臨整外 2011;46:303-310 慢性疼痛のマネジメントにおいては、まず患者の痛みがどちらのいたみか(急性疼痛が遷延したもの、またはいわゆる難治世慢性疼…

慢性疼痛患者のとらえ方

村上孝徳、山下敏彦 慢性疼痛患者のとらえ方 臨整外 2011;46:299-302 1986 IASP 慢性疼痛の定義 治療に要すると期待される時間枠組みを超えて持続する痛みあるいは進行性の非がん性疾患による痛み この定義には「慢性疼痛の病態は複雑であり侵害受容性疼痛、…

仙波恵美子 筋骨格系の痛み その慢性化のメカニズム 臨整外 2011;46:291-298

痛みの種類 生理的な痛み、病的な痛み 急性痛、慢性痛 皮膚の痛み(鋭く、焼けつくようで、局在がはっきりしている)、深部組織痛(内臓の痛みと同様に不快で苦痛が強く広範囲にわたり、障害の部位から離れたところにも放散しやすい) 痛みの中枢回路 −最近の…

松平浩 知っておきたい腰痛の知識 第2回 季刊ろうさい 2010 夏号Vol 6 26-31

著者らの行った疫学調査 PACE survey 2009.jp pain associated cross-sectional epidemiological survey) JOB study (Japan epidemiological research of occupation-related back pain study) PACE surveyのまとめ 国民生活基礎調査どおり、痛み愁訴の中で…

松平浩 知っておきたい腰痛の知識 第一回 季刊ろうさい 2010 春号 vol5 24-31

ほねのずれ(すべり)やヘルニアなどの画像上の異常所見があっても、腰痛で困っていないひとはいますし、逆に、腰痛の経験があっても画像所見は正常な場合もあります。すまり、画像上の異常所見は必ずしも痛みを説明できないことが理由の一つです。よって、…

西原真理、牛田享宏 疼痛治療の今日的意義 臨整外 2011;46(4):287-289

疼痛はその定義上、障害性の要素と同時に大脳皮質の機能障害という側面を含んでおり、統合的な理解を進めなければならない 痛みは主観的な症状であり、末梢組織の障害から、脊髄、大脳皮質の機能異常まで各レベルで捉えていく必要がある。この難しさによって…

松平浩 痛みとは 難病と在宅ケア 2006;11(3):12-16

脊椎には椎間板、神経組織、関節(椎間関節)、種々の靭帯、筋肉等痛みを発しうる組織が数多くあり、これらのどこが原因かは特定できません(非特異的な痛み)。よってレントゲン検査はあまり役に立ちません。しかし、どこが原因であれ、損傷部位の炎症が警…

松平浩 大規模疫学調査から見えてきた日本人の腰痛 医道の日本 2010;799:11-23

例えば腰痛の犯人は椎間板だと信じるほうが、我々整形外科、脊髄外科医にとって治療をしやすいのですが、、椎体間を固定したり、人工椎間板(日本では使用できない)に置換したりしても、必ずしも患者さんを幸せにできていないのが現状です。 非特異的腰痛は…

松平浩、町田秀人、内田毅、小西宏昭、三好光太 仕事に支障をきたす非特異的腰痛の危険因子の検討 日本職業・災害医学会会誌 2009;57(1):5-10

欧米では、作業関連性腰痛が社会および経済に与える影響について多くの研究が行われてきた。これまで、腰痛の発症原因に関する研究では、身体的負荷および人間工学的問題がより重点的に検討されてきたが、いくつかの前向き研究の結果から、仕事の満足度や精…

慢性疼痛治療の新戦略

RD フィールズ 慢性疼痛治療の新戦略 日経サイエンス 2010 2月号 37-44 彼女の慢性疼痛は、身体の痛覚回路に異常が起き、絶えず間違った警報を鳴らし続けるせいで起きているのだ 脳や脊髄にあるニューロンとは別の「グリア細胞」の機能不全によって生じる痛…

脊椎手術後疼痛症候群 

大谷晃司 脊椎手術後疼痛症候群 麻酔 2010;59:1370-1377 無症候性の画像上の変化に対して手術が行われ、結果的に症状がよくならないという患者は、残念ながらいまだに多いと言わざろうえない BS-POPの評価内容 治療者用 疼痛行動(過敏性、演技性、誇張性)…

松平浩、小西宏昭、三好光太、内田毅、竹下克志、原慶宏、町田秀人 勤労者における「仕事に支障をきたす非特異的腰痛」の危険因子 日整会誌 2010;84:452-457

JOB(Japan occupational research of occupation-related back pain) study ベースラインデータ 首都圏42事業所約3万人の他業種の勤労者に調査依頼 書面で同意を取得できた 9307人(男 7720、平均年齢 42歳) 一年後の追跡調査 3811人 2年後 3194人 仕事…

慢性疼痛

中島恵子 慢性疼痛 総合リハ 2010;38(8):735-743 痛み行動 Fordyceらは、痛みをめぐって人が起こす随意的行動、すなわちオペラント(痛みを訴える、病院へ行く、薬を飲む、仕事学校家事を休むなど)を、知覚の痛みと区別し、総称して痛み行動と提唱し、「原…

住谷昌彦、宮内哲、植松弘進、四津有人、大竹祐子、山田芳嗣 幻肢痛の発症における大脳運動野の関与 麻酔 2010;59:1364-1369

ヒト幻肢痛症例を対象とした脳機能画像研究からは、大脳/脊髄上位中枢レべルでの機能再構築(reorganization)が幻肢痛の発症基盤として中心的な役割をはたしていると考えられている このようなS1/M1(senosorimotor cortex)での体部位再現地図の機能再構築は…

虐殺器官

虐殺器官 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)作者: 伊藤計劃出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/06メディア: 単行本購入: 26人 クリック: 817回この商品を含むブログ (326件) を見る 痛覚マスキング。国防高等研究計画局が開発したこのグロテ…

交通事故後の遷延した疼痛

平林冽、高山真一郎 交通事故後の遷延した疼痛 麻酔 2010;59:1350-1356 大人ほど他罰性を認識しない小児や他罰性のない自己の過失による事故では、痛みはまず遷延しないといえる 交通事故で同じ頸部挫傷を受傷したとしても、本人には過失がなく追突された患…

松平浩 職場での腰痛には心理・社会的要因も関与している 産業医学ジャーナル 2010;33(1):60-66

Snook SHは現代社会において大きな問題は、”low back pain(LBP)”ではなく、”low back disability(LBD)”であると述べている 欧米ではbiomedical modelを前提とする人間工学的アプローチに主眼をおいた腰痛対策が立ち行かなくなった背景から心理・社会的要因が…

半場道子 慢性疼痛と脳 連載第4回 Practice of pain management 2011;2(3):176-182

「希望すること」、「きっと快くなると期待すること」が脳活動を刺激し、いかに生命機能を一変させるか、その機序の一端がみえてきた placebo鎮痛のメカニズムの中心となるのは、mesolimbic dopamine systemとopioid system 右の側坐核(rNAc)におけるdopamin…

うつ病と腰痛

吉田勝也、加藤敏 うつ病と腰痛 ー対象喪失と秩序の破綻 臨床精神病理 2006;27:185-195 Schoffermanらは、子ども時代に、親が薬物依存であったり、身体的虐待、性的虐待、ニグレクト、遺棄による心的外傷を受けると、成人してから、慢性腰痛に罹りやすいと述…