古江秀昌、加藤剛、馬場洋 下行性制御機構:ノルアドレナリン Bone Joint Nerve 2012;2(2):231-237
- 最終的には脳幹に存在する青斑核(ノルアドレナリン)や縫線核(セロトニン)から下行する線維によって、痛みの中枢への入り口である脊髄後角において、末梢から痛みの入力が選択的に、かつ有効に抑制されるものと考えられている
- ノルアドレナリンは最終的なターゲットとして脊髄GABA(中枢神経系における抑制性神経伝達物質)ニューロンを賦活化させて鎮痛効果を現すことが明らかにされている
- 脊髄後角においてノルアドレナリンはアドレナリンα1およびα2受容体を活性化して痛みの伝達を調節する
- 脊髄への痛みの入力とノルアドレナリンによる痛覚シナプス伝達調節機構
- Aβ 触圧覚 120-40m/sec 有髄
- Aδ 痛み 40-15 有髄
- C 痛み 2-0.5 無髄
- ノルアドレナリンを灌流投与すると、膠様質細胞に惹起されるこれらAδとC線維を介した興奮性のシナプス後電流の振幅が共に抑制される
- この抑制にはAδとC線維脊髄終末部に発現するシナプス前性α2受容体の活性化が関与し、終末部からグルタミン酸の放出量が低下するためと考えられている
- このようにノルアドレナリンは、痛みの中枢への入り口である脊髄後角表層においてシナプス前性および後性にα2受容体に作用して痛みの伝達を抑制する
- 痛みに対する青斑核ニューロンの応答と青斑核刺激による脊髄GABAニューロンの賦活化機構
- 青斑核は痛みによって一過性に発火頻度を上昇させ、それによって脊髄ではノルアドレナリンが放出され主にα1受容体を介して、GABAニューロンが賦活化され除痛効果が現れることが示唆されている
- 脊髄電気刺激法による鎮痛効果発現機構と慢性疼痛に対する下行性痛覚抑制機構
- 後索刺激によって抑制性のGABAニューロンなどが活性化されることを証明しており、脊髄電気刺激法の有効な除痛機構の一つであることが示唆させる
- 慢性疼痛モデルにおける脊髄電気刺激法の除痛効果の増大には、ノルアドレナリンなどのモノアミン系を介した脊髄におけるGABAニューロンの賦活化が寄与するものと推測される
- 起始核である橋ノルアドレナリン含有ニューロン群などが変調し、異常な慢性痛を排除するために下行性抑制能を亢進していると考えられる
- ノルアドレナリンによる鎮痛も脊髄電気刺激法による除痛も、ともにおそらく中枢神経系における主要な抑制性伝達物質であるGABAを利用して有効な除痛効果を現すものと考えられる