身体症状症および関連症候群

関口敦:身体症状症および関連症候群 心身二元論からの脱却 精神医学 65(10):1395-1399,2023

  • DSM-5-TRでは「心因性」や「転換性障害」といった概念から離脱し、心身二元論からの脱却がより明確になった。
  • この枠組みは、身体症状は単なる精神疾患の表現型との理解を超えて、身体的苦痛と精神的苦痛は密接に関連していることを認識し、身体症状の訴えが、どの程度意識的または意図的なものであるかを問わないという考え方に基づいている
  • DSM-5-TRでは、身体症状症の診断にあたって、作為症と詐病との鑑別診断として、身体症状症の患者は、「身体的愁訴に対して真剣に苦しんでいること」を強調し、作為症と詐病では、騙す目的で身体症状や徴候を偽っていることを明確にしている。
  • DSM-5からDSM-5-TRへの改訂は、身体症状症は、患者の苦痛体験を主軸に置いた疾患概念であるとの理解を深める重要な一歩と考えられる。
  • 機能性神経学的症状症(変換症)
    • 特に、既知の神経学的疾患との「不適合の明確な根拠を示す臨床所見」に基づいて診断が行われるべきとしており、決して除外診断ではないことが強調されている。そして、患者の身体症状が精神症状からの「転換」であるという概念からの離脱を意味する。
    • DSM-5-TRにおける本診断は、「明白な根拠が存在し、それが身体の症状に直接的に関与していない医学的状態または他の精神障害によって説明できない場合」に限られる
    • これにより、神経学的評価や臨床評価の重要性が強調され、特に機能的な症状の確認が求められている
    • 加えてDSM-5-TRでは、精神的ストレスや心理的因子が症状の発症に関与しているという証拠は、診断には必須ではないと明示されている
    • これは重要な改訂で、これにより、心因性の証拠を診断に必要とする伝統的な心身二元論的視点からの脱却が進められている。
    • さらに、疾病利得の存在もこの疾患の診断には必須ではないと明確化されている。
    • これはDSM-5から明示されているが、機能性神経学的症状症が、その存在が外的な報酬や疾病利得に動機づけられる行動であるという理解を拭い去るものとなっている
  • 作為症
    • DSM-5-TRの改訂では、「症状の意図的な作為が確実に証明されているか、または証拠が強く推測される場合」に作為症と診断される