- 患者はその痛みのみならず痛みにより引き起こされた苦痛を含めて痛みとして訴え、それを取り除いて欲しいと願う
- 痛みは伝達とこの不快情動の2つをもって警告信号としての役割を果たす
- 人間は、「痛い感覚」と不快情動を伴うものである痛みがなくなることを切に願い、二度と同じ経験をしたくないがために回避するのである。なくなってほしいと切に願う痛み長く続けば抑うつを生じ、ついには絶望感、生きることへあきらめすら生じてしまうことになる
- 慢性疼痛を引き起こす可能性のある病態変化を、神経系、筋骨格系、精神・心理系の大きく3つのカテゴリーに分類する
- 痛みは自身の身体障害にとどまらず、家族障害(夫婦、家族関係の不和など)や社会障害(社会からの孤立、社会的生産性の低下など)といった周囲との関係性の障害を引き起こす
- このような慢性疼痛を包括的に捉え、アプローチしていくためには、身体的問題、精神・心理的領域から社会問題までを含めて包括的に取り扱っていく必要がある。総合解釈に基づき、痛みだけ治療するのではなく、痛みを含め痛みによって惹起された新たな問題(痛み関連障害)を適切にマネジメントしていくことが重要となる
- 学際的痛みセンターでの評価
- 疼痛生活障害尺度 pain disability assessment scale ; PDAS
- HADS (hospital anxiety and depression scale)
- 痛み破局化尺度 (pain catastrophizing scale; PCAS日本語版)
- 認知行動療法の考え方
- 認知療法 「自分は慢性疼痛のためになにもすることができな不要な人間である」といった認知(考え方)の歪みを捉え、合理的な考えkたに転換すること(認知再構成法、コラム法など)で、問題解決を図る
- 行動療法 「慢性疼痛だから動かさない(不活動)」などの行動を修正すること(エクスポージャー法、行動活性化法など)、で不活動によって惹起される廃用症候群などの全身的問題の解決を図る
- 誤った行動は歪んだ認知によって引き起こされるため、認知と行動は表裏一体のもので、認知行動療法はこれら2つの療法を融合した技法である
- 慢性疼痛状態では、ネガティブな思い込み(自動思考:ある出来事がおこったときに瞬間的に想起される観念)に取り憑かれ、現実が見えなくなり、自分自身にとって重要なことを見失っている状態、つまり自分の身体機能・生活にとって不合理な行動を選択している状態とも言いかえることができる
- この歪んだ思い込みを自分にとって必要な考えに修正する手助けを行い、身体機能の改善に向けた行動の動機を導き、具体的に現状の身体状態に最適の行動手法を患者とともに考案し、その実行の手助けをすることが認知行動療法である
- 認知へのアプローチ
- 医療従事者が認知に働きかけるためには、患者がどのような見方、考え方をしているのかを正確に評価することが前提となる。そのためには患者の発する文言を傾聴(こちらから訴えることなく、徹底的に訴えを聴く)し、受け入れ(否定しない)、共感(自分のこととして感じる)することが必要である。
- ただし同情的に関り過ぎると患者の痛みを逆に長引かせたりするので、オペラント的に中立的立場で接することが原則となる。そうした医療者の姿勢で、患者が心の奥底に抑圧している革新的な考え方を引きですことができる
- 行動へのアプローチ
- 終わりに
- 慢性疼痛治療において重要なことは、痛みおよび痛みにより生じた患者自身と家族に起こりうる機能・能力・社会的障害を含めて包括的にマネジメントすることである
- そのためには患者と医療従事者がタッグを組んで、ときに家族を巻き込みながら、ともに痛み関連障害へ立ち向かっていく共同作業が重要である
- つまり患者が従来のような受動的に提供される医療をうける立場ではなく、自らも積極的に医療活動に参加し、能動的に問題解決に向けて取り組むという関係の中で行われる作業である