井辺弘樹、仙波恵美子 下行性疼痛制御機構におけるセロトニンの役割 Bone Joint Nerve 2012;2(2):223-229
- PAG(中脳中心灰白質)から脊髄への直接の投射はほとんどなく、RVM(rostal ventromedial medulla; 吻側延髄腹内側部),DLPT(dorsolateral pontomesencephalic tegmentum; 背外側橋中脳被蓋)を介して脊髄後角での侵害情報伝達を調節している
- RVMに含まれる大縫線核(nucleus raphe magus;NRM)は主にセロトニン(5HT)ニューロンを、DLPTに含まれる青斑核(locus coeruleus;LC)はノルアドレナリン(NA)ニューロンを含有する
- RVMには尾に加えられた熱刺激ん対する電気生理学的反応によりOn-cell, Off-cell, Neutral cellという3種類に分類されるニューロンが存在
- On-cellは脊髄後角での痛みの伝達を促進し、Off-cellは痛みの伝達を抑制するといわれている。5HTニューロンはすべてneutral-cellに分類される
- この10年間の間に下行性疼痛調節系には疼痛抑制と疼痛増強という2つの相反する作用が存在することが広く知られるようになった
- 生理条件下では疼痛を抑制する下行性疼痛抑制系が、種々の慢性化した病態下では、逆に疼痛を増強する実験結果が示された
- どうしてRVMが鎮痛作用もしくはまったく逆の発痛作用を発揮するのであろうか?この疑問に対してstate-dependent controlという概念がある。すなわちRVMは、全体が一つの回路として、On-cellの活動が亢進し発痛作用をおこすOn-cell stateかOff-cellの活動が亢進し鎮痛作用を起こすOff-cell stateのどちらかの状態で働くというのである
- 下行性疼痛調節系における5HTニューロン(すべてneutral cell)の役割
- 病的な疼痛においてRVMへのCCKやBDNF入力が脊髄後角への5HRT投射を増加させるらしい
- 末梢神経損傷後、RVMにおいて鎮痛性のRVMニューロンが細胞死を起こし、下行性疼痛抑制から下行性疼痛増強へと変化するのではないかと考えられている