池田祥子、塩谷正弘 疼痛患者の教育指導とその実際 ペインクリニック 2007;28:S258-265
- 慢性疼痛は身体的、精神的、社会的、行動的なプロセスを含む複雑な経験の一つとして知られている。時間の経過の中で、痛みが生体への警告信号への役割を超え、身体感覚としての苦痛とともに、患者が持続的に不快な情動体験を強いられ、さらに通常の日常生活の行動様式の変容をせまられるという複雑な体験を意味するようになる。
- 患者の三つの特徴
- 同様の主訴(もしくは多彩な身体症状)のため患者の意志により複数の施設への受療行動が繰り返されている
- 身体的な所見に比べ仕事や生活に対する影響が著しい
- 事故や医療行為の後、適切な治療が終わっているのにもかかわらず痛みが遷延している
- 患者の問題解決のために医療者側が可能な限り協力する姿勢を整えることにより、患者本人が能動的に治療へ参加できるように促していく姿勢であろう
- 心理療法の基本的なキーワードの中に受容と共感がある
- 患者が痛みの原因をどのように認識しているか確認する
- 患者教育
- 痛みというものが、認知的側面、情動的側面、行動的側面を含む個人的な体験であり、そのすべてを包括したシステムに働きかけていく必要がある
- 身体科で、痛みの原因となる器質的原因の有無という二者択一的な視点での診察をうけてきた
- これといった器質的な病変は見つからない場合もあるかもしれません。だからといって、痛みがあなたの気のせいであるというわけではないと思います。
- ただ原因のわからない痛みにたいして根治的な治療ということは困難ですし、取り組むべきではないと思います。そうすると今後の生活の中で、いかに痛みをマネージメントしていくかということが治療の目標にならざるをえません。
- 痛みというのは一人一人にとって違った体験ですので、その方の生活のパターンや精神状態によっても対処法は変わってきます。
- 認知行動療法
- 目標は痛みがなくなることでない。趣味のために外出が可能となるといった日常生活における具体的な行動目標を共有する
- 支持精神療法
- 現在の疼痛体験には触れずに、その当時の感情体験を自然に表出できるように支持的に対応