本田哲三 慢性疼痛のリハビリテーション リハビリテーション医学 1997;34:405-409

  • デカルト Descartes 1647 疼痛は感覚的経験の一種であり、その程度は概ね組織損傷の重症度と一致する
  • Fordyce
    • 疼痛行動に注目(顔をしかめるたり職場を休む、といった痛みを表現するような行動の総称)
    • 患者が執拗に痛みを訴え続けるのは疼痛行動が強化されているからと考えた(その行動をとることによって、本人にとって快い報酬が得られるーたとえば仕事を休める、周囲から注目されるなど)
  • Loeser 痛みを4相から説明
    • 末梢での組織への侵害刺激
    • その刺激神経系の知覚である疼痛感覚
    • そして疼痛感覚への中枢における陰性の反応(苦悩)
    • 疼痛行動
  • 慢性疼痛の治療選択のための適切な評価法は確立されていない
    • IBQ (illness behavior questionnaire)
    • 著者は本邦では行動療法より認知的アプローチ(教育、リラクゼーション)重視が適していると考えている
  • 疼痛管理プログラム
    • 痛いからなにもできないという患者の否定的な思い込みを痛いけれどもやるべきことはやれるし、生活も楽しめるといった積極的態度に変える
    • 基本動作を記録  運動学的な観点から問題点および疼痛行動を観察
    • 痛みの性質、患者の痛みに対する意味付けと態度、疼痛行動が周囲に与えている影響およびプログラムへの適応を評価
      • 痛みはかならずしも疾病の徴候ではない
      • 現在のところ慢性疼痛に特攻的な治療法はない
      • 慢性疼痛は適切な身体活動が望ましい
      • 環境や生活習慣を変えるとともに、自分に適した疼痛管理法を身につける必要がある
    • 運動の結果の可視化
    • 心理精神部門 患者に痛みに対処する心理的テクニックを教える
    • 慢性疼痛治療のこつ
      • 安易に心因性疼痛ときめつけない
        • たとえどんなに不合理な訴えでも一度は患者のとってすべての痛みは真であるとして受け止め、その上で痛みについての教育と管理法をさぐっていく
      • 慢性疼痛に痛みに障害的に対応する

本田哲三 疼痛性障害の診断と治療 精神科 2004;4(2):101-108

  • 1664 Rene Decartes デカルト 疼痛は感覚的経験の一つであり、その程度は概ね組織損傷の程度に一致する
  • 1959 Engel 器質的原因に乏しい痛みの訴えを心因性疼痛と名付けた
  • 1965 Melzack&Wall Gate control theory
    • 疼痛体験は単に末梢から中枢への一方向の感覚ではなく、中枢からの関与(感情や認知の要素)や脊髄後角での神経線維間の活動量の競合の結果である
  • 1973 Fordyce 行動療法の立場から慢性疼痛患者の疼痛行動に注目
    • 患者が執拗に痛みを訴え続けるのは、その行動により患者にとって好ましい結果(たとえば、休息、補償金、家族からの介助、病院への通院などの心理学では強化子とよばれる諸因子)がえられるためであると考えた
  • 1958 Fahrni back education
  • 1960 Sweden low back school
  • Loeser 疼痛体験がcocieption (侵害刺激), pain (疼痛感覚), suffering(苦悩), およびpain behavior(疼痛行動)の4相からなるmulti feceted modelを提唱
    • suffering 疼痛感覚により引き起こされる中枢での陰性の情緒的反応
  • 1999 Melzack 疼痛の伝達と抑制の過程に関するdynamicなmatrix(神経線維網)モデルを提唱
  • 以上からわかるとおり、疼痛は単に知覚体験や心理的要因に帰せるものではなく、身体ー心理ー社会的に包括的な理解が必要
  • 痛みの定義 IASP international association on study on pain 1986
    • 実際のおよび潜在的な組織損傷に関係、あるいあはそのような損傷に関連して述べられるような不快な知覚及び情動的な体験
  • 3週間の短期集中プログラム
    • 治療目標 認知行動療法の原則に基づき、身体心理的な訓練や講義により身体活動性を増加させるとともに、それを通じて痛いからなにもできないという患者の否定的な認知(思い込み)を痛いけれどやるべきことはやれるし、生活は楽しめるといった建設的な態度に変える
    • 痛みの除去を直接めざすわけではない
    • 社会的心理な問題が錯綜して難治なケースには限界あり 二次的疾病利得、家庭問題
    • 留意点
      • 安易に心因性疼痛ときめつけない
      • 痛み障害的に対応
      • チーム全体でサポート
  • 痛みを人生の一部として受入れ、痛みとともに生き、そして、痛みにも拘らず充実した人生を楽しむといった痛みの受容へ向かう