慢性疼痛1

ずばり慢性疼痛という雑誌もあり、日本慢性疼痛学会もある。麻酔科ペインクリニック系の学会か?medical onlineに登録されているのでバックナンバーはとりよせやすい。まさにmedical onlineさまさまである。


中島節夫 行動痛と慢性疼痛 慢性疼痛 2000;19(1):16-21

  • 1970年代まで
    • 痛みの訴えの程度が器質的な所見を上回る 場合は転換ヒステリーと考えた。学問的背景として精神分析
  • その後 Mayo 丸田ら
    • 痛みと痛み行動を明確に区別し痛み行動のみを治療の対象と取り上げ、痛み自体は治療対象から除外するという立場をとった
    • 1991 Clinical J Pain, editorialでchronic behavioral pain by Wilson
  • 行動痛の治療 丸田
    • 行動痛のような痛み行動は報酬を与えるような反応によって維持され、中立的立場によって消去されるので、行動療法理論に基づく治療においては内科、外科病棟において日常的である痛みがあればあるだけ濃厚に治療や看護が受けられるのとは異なり、治療はあるいは病棟スタッフは痛み行動に対しては中立に反応し、その代わり痛み行動のの減少や、より適切な行動の増加に対しては、サポートと支援を与えるという方針で対応するのが原則

北見公一 社会反応性疼痛行動にういて 慢性疼痛 2001;20(1):9-13

  • level 1 個人の性格レベルの問題 合理的判断能力はあるが医療への不信が強い場合。社会環境整備を行い患者の必要とする医学的知識などを伝える
  • level 2 治療関係ユニット形成による対人関係の孤立化 多数回手術症例などにみられ、患者の疼痛行動に対する医療者側の反応が作り出した過剰医療関係
  • level 3 個人対集団(社会環境での複雑な対人関係)レベル 解決不可能な状況に固執する頸椎ねんざ症例を助長しているのは、医療者の姿勢、損保側の対応、患者の関係する人々の性格などであり、それに患者をとりまく人間は相互に連絡が希薄である。
  • 疼痛行動とは言葉や表情動作などで痛いんだと相手にわからせる行動全体をいう。交通事故では患者は自分は被害者だという意識をもっている。相手はなんらかの過失を犯しているので罪に問われて当然であり、償いをしなければならないと考える。そこには怒りと憎しみ、自分は損をしたくない、他人よりよく扱われたいという優先意識がある。そこへ病院での医師の態度、医療従事者の言動などが重なる。医師がこれは全部自己のせいだというと、患者である被害者はもちろんその気になり、他の医師や保険側がいくら和解策を提示しても、自分に完全に有利でないと受入れようとしない。逆に医師がなんでもないというと被害者意識が強く働き、他の医療機関へ行くか、何度も繰り返し神経症的に治療を求める結果となる。つまり治療にあたる医師の性格により患者の反応として疼痛行動が違い、患者は無意識に自分の人生のシナリオに乗ってくれる医療者を探そうとする。そして自分の人生に対する構えが正しいと満足できるような結末をえるために医療者にゲームを仕掛ける。社会反応性疼痛行動は医療関係者あるいは事故の加害者や損保担当者などの相手がいてはじめて成り立つもので、一種の環境から引き出される反応形式なのである。

永田勝太郎 慢性疼痛に全人的医療はなぜ必要か 慢性疼痛 2001;20(1):83-89

  • 全人的医療
    • 患者をいついかなる場合においても、病をもった人間(個人、全人whole person)としてとらえ、身体的心理的社会的実存的な視点から、包括的に(全人的)理解し、その過程のなかから、患者固有の問題の解決を図ろうとするもの
    • 全人的医療の実践に対しては、医師側の態度や力量が問われてくる
    • 患者を生活者としてとらえ、その生活の中で診断治療してゆこうとする医療
  • 慢性疼痛の治療を阻害する最大の要因は医療不信、医師不信
  • 医療面接 痛みがなおったら何をしたいか?
  • 患者の痛みからくる怒りは患者の家族にも波及していた
  • 心理社会実存的見地からすると、患者の疼痛は患者の叫びであると考えられた
  • この患者に取っていたみの意味は、一人にしないでくれ、誰かそばにいてくれ、という叫びであった
  • 我々医療職は、それぞれの立場で、痛みの意味を読み取らねばならない
  • バリント方式の医療面接法