中井吉英 ペインクリニシャンのための心身医学的知識 ペインクリニック 2007;28:S82-89

  • 筆者は慢性疼痛を器質的原因の除外された痛みでなく、器質的要因、機能的要因、心理的要因の3要因が重複した痛みであると考えている
  • 心理的要因
    • 一次的要因
      • 慢性疼痛に陥りやすいpersonality 神経症的性格の人が痛みに罹患すると2次的要因として神経症的な痛み行動に発展することがある
    • 2次的要因
      • 痛みが持続することにより生じるうつ
  • 薬物療法
    • 痛みが増強したときの屯用は与えない
    • できるだけ散在や顆粒であたえる。両者種類を患者に知らせないため、プラセボに置き換えて行くため、特定の薬物に依存させないため
  • 疼痛行動を獲得するための3条件
    • 疼痛行動は直接の正の強化を受けている
      • cf. 痛みがあることではじめて両親が心配し世話をするようになり、結果的に愛情を得るといった体験が重なるうちに、次第に疼痛行動を学習
    • 回避学習といわれ、疼痛患者が日常生活において、不快となる体験を痛みがあることで避けることができ、間接的に疼痛行動で強化している
      • cf. 痛みがあることで学校や職場に行かなくてすむ場合
    • 疼痛行動は、それとは反対の望ましい行動が強化されていないことにより生ずる
      • cf. 散歩、運動、作業、鎮痛薬の減少など痛みの改善にによいと思われる行動を家族や医療スタッフが注目、賞賛しない
  • いづれの場合も患者への家族の対応が疼痛行動に関わっており、これらのことが明らかになれば、家族の患者への対応の仕方を的確に指導することができる
  • 慢性疼痛患者の治療的接近に際しては、痛みがあることで患者は何を得ているか(強化因子、回避学習)を評価することが最も重要である。