慢性疼痛はどこまで解明されたか 2

菅原努監修 慢性疼痛はどこまで解明されたか 昭和堂 2005 ISBN:4812205085

p19 中井吉英 慢性痛と患者の心理

  • 1982 に本慢性疼痛学会発足
  • 慢性疼痛 単に生物学的な痛みだけでなく、心理的、社会的、行動的要因が加わる。癌だと霊的なものも加わる
  • 事故当初は器質的要因に基づく痛みが中心であったが、慢性疼痛になると器質的要因だけでなく、痛みに対するとらわれや注意固着などの心理的要因、筋肉の循環障害などによる機能的要因、痛みのために局部をできる限り動かさずにいるといった痛み行動が互いに関係性を持つようになり、病態が複雑化するのだということが分かった。また疼痛刺激の持続により自律神経機能異常が痛み持続や随伴症状に関係していることも分かった。
  • 痛みに対する考えや態度を考えることで痛みを受入れつつ運動も積極的にするようになると、痛みは徐々に遠のき、やがて消失した
  • 痛みは急性期のうちに適切に処置する
  • 慢性疼痛の病態
    • 器質的、機能的、心理的の三要因の重複した病態が慢性疼痛であり、痛みの期間が長くなるほど、疼痛の発現や経過に心理的要因の占める比重が高くなる
    • 疼痛の持続期間が長くなるほど、痛みの原因に関わらず患者は神経症的傾向が強くなる
    • 急性疼痛の時期に、すでに慢性疼痛のしての病態が認められる
  • 慢性疼痛の病態を考える場合に
  1. 痛みの伝達経路
  2. 疼痛下行性制御系神経系
  3. 機能性障害
  4. 痛みに伴う情動

の理解が必要

  • 慢性期には、例えば家族からの関心といった社会的要因により正の強化が得られ、家族の関心といった疼痛の結果としての報酬が随伴することや(オペラント学習)、職場での責任が回避されるといった負の強化が得られることにより、回避学習、疼痛の頻度や強度が増強され、疼痛行動が出現する。疼痛行動は、例えば痛みの訴え、服薬行動、表情、姿勢、対人関係、休職や訴訟などの社会的行動など、多種多様であり、これらの疼痛行動は、疼痛の期間が長くなるほど強化されることになる。