2013-01-01から1年間の記事一覧

生活習慣病としてのうつ病

精神科の内部批判というものは一面では難しい。わたしのように「薬漬け」批判を行うと、どうしても精神科の一部を敵に回すことになってしまう。ただ、私は少数の同僚を敵に回すことよりも、多数のユーザーを敵に回すことの方を恐れる 逆に、私に言わせれば、…

思春期の精神科面接ライブ-こころの診察室から‐

思春期の精神科面接ライブ-こころの診察室から‐作者: 井原 裕出版社/メーカー: 星和書店発売日: 2012/02/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (2件) を見る

思春期の精神科面接ライブ-こころの診察室から‐

精神科面接の教科書には、「傾聴」、「支持」、「共感」が精神療法の基本として無造作に並べ立ててあるのですが、それらを診察の状況においてみると、必須とされるものが時として有害であることに気付かされます。実際、何も考えないで教科書のとおりに、「…

痛みによるエピジェネティクス修飾の理解と脳内ネットワーク異常応答

山下哲、濱田麻美、須原佑樹、成田年 痛みによるエピジェネティクス修飾の理解と脳内ネットワーク異常応答のオプトジェネティクス ペインクリニック 2013;34(8):1078-1090 エピジェネティクス修飾とは、突然変異のような塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現…

下行性疼痛促進系

井辺弘樹、仙波恵美子 下行性疼痛促進系 ペインクリニック 2013;34(8):1069-1077 RVMを構成するneuron On-cell 熱刺激に対する逃避反応発生の直前に活動を始める細胞 脊髄後角の投射し、痛みの伝達を促進 Off-cell 逃避反応の発生の直前に活動が止まる細胞 …

半場道子 機能的脳画像からみた慢性疼痛 ペインクリニック 34(8);1100-1109

痛みの要素 感覚・弁別感 sensory/discriminative 情動・動機的 affective/motivational 認知・評価的 cognitive/evalative 慢性腰痛における侵害受容は健常者とかわらない 慢性腰痛では、offset時の賦活部位が健常者と大きく異なる 健常者の場合は、…

痛みの中枢機序

岩田幸一、篠田雅路 痛みの中枢機序 ペインクリニック 2013;34(8):1049-1058 痛みの分類 sensory discriminative aspect of pain 侵害刺激に対する警告系として機能 motivational and affective aspect of pain 痛みの情動的な性質をあらわず cognitive and …

忘れ得ぬCRPS症例との出会い

山田信一 忘れ得ぬCRPS症例との出会い ペインクリニック 2013;34(8):1141-1146 九州大学心療内科で研修した際も、今でも一番大切にしていることは”気づき”である。この気付きを得られるかどうかで、その後の展開が大きく異なるのである 診察の際には「よく患…

症例から学ぶ戦略的慢性疼痛治療作者: 樋口比登実出版社/メーカー: 南山堂発売日: 2013/07/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る

笠原諭、関山裕詩 他科との連携 ペインクリニック 2013;34:S249-S261

急性痛のような、「生物学的な痛みの原因を除去すれば、痛みは寛解し機能障害は減少する」という生物医学モデルでは不十分で、生物心理社会モデルに基づいて評価することが重要になる 橋爪らは、慢性疼痛における身体表現性障害を精神科紹介で対処するのは困…

松平浩、磯村達也 慢性疼痛の疫学研究 運動器疼痛に関わる疫学的知見の紹介 ペインクリニック 2013;34:S53-S61

2009/1 本邦における慢性疼痛の実態を把握する目的でおこなったインターネット調査 20-79歳の20044名 慢性疼痛の点有病率 22.9% 過去一年間に医療機関や整骨院等へいったのは55.9% 病院・診療所受診者における治療満足度では、45.2%が不満 EQ-5Dの国民平…

プライマリケアの精神医学―15症例,その判断と対応作者: 井原裕出版社/メーカー: 中外医学社発売日: 2013/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る

著者の講演を2013/7月のペインクリニック学会での教育研修講演、および製薬会社のweb講演会で拝聴したことがあり、このたび著作を取り寄せて拝読した。非常に示唆に富む本であり、慢性疼痛の臨床に応用が可能と思った。 高齢者の不眠 まず尋ねるべきは、夕…

痛みだけのやりとりから、もう少し間口を拡げてみませんか?

田代雅文 痛みだけのやりとりから、もう少し間口を拡げてみませんか?ペインクリニック 2013;34(7):1009-1014 背部痛から過敏性腸症候群への症候移動 姉妹葛藤 心理社会的背景の一つ 治して恨まれた症例 側腹部痛で仕事にいけない 痛みの意味 仕事へいきたく…

疼痛性障害における病名告知と説

堀川直史 疼痛性障害における病名告知と説明 精神科治療学 2004;19(2):169-174 疼痛性障害の情報提供と治療関係への配慮 治療のためには、病名、病態、治療、経過の説明とその後の十分な話し合いが必須 患者が精神科治療について疑問や不安を持ち、自尊感情…

松原貴子 慢性疼痛のリハビリテーション 臨床精神医学 2013;42(6):733-738

これまで本邦では、疼痛は何らかの組織異常から生じる感覚障害として単軸的なとらえ方がなされ、原因探しと末梢への対症的アプローチ、つまり「生物医学モデルbiomedical model」に基づく疼痛治療が行われてきた しかし、慢性疼痛に対しては、それだけでは対…

慢性疼痛における精神科的併存症

村上伸治 慢性疼痛における精神科的併存症 臨床精神医学 2013;42(6):765-769 身体化障害については、薬物療法は有効とは言えず、治療薬の依存に注意しながら、「痛みをとる」ことよりも、「症状とつきあっていく」ことをじっくりと行っていく姿勢が求められ…

慢性疼痛と疼痛性障害の「ペイシェント・エンパワーメント」

堀川直史 慢性疼痛と疼痛性障害の「ペイシェント・エンパワーメント」 臨床精神医学 2013;42(6):749-755 疼痛性障害のマネジメントとペイシャント・エンパワーメントの関係 疼痛とその苦痛、患者の置かれた苦境などを聞いて理解する 「すぐに治療が必要な重…

笠原諭 慢性疼痛に対する心理的評価と認知行動療法 臨床精神医学 2013;42(6):739-748

慢性疼痛の患者は概して、心理的葛藤に対して否認・抑圧・身体化の防衛機制を用い、医師的・無意識的に心理的な悩みを隠そうとする傾向もあり、問診による情報だけでは病態の正確な評価は困難である 患者や家族に対して「あなたの家族のやりとりに問題がある…

痛みによる負情動精製の神経機構

南雅文 痛みによる負情動精製の神経機構 臨床精神医学 2013;42(6):715-723 前帯状回破壊による場所嫌悪反応の抑制は、痛みの情動的側面に特異的な脳内メカニズムによるものであると考えられる 前帯状回でのグルタミン酸神経情報伝達亢進が、負情動生成に重要…

慢性疼痛に関わる精神科

山田了士 慢性疼痛に関わる精神科 臨床精神医学 2013;42(6):709-714 一般的な精神科外来における治療の方向性として、生活の充実と病者の役割からの脱却という視点から述べてみたい 精神科医の慢性疼痛を診るのは避けたいという理由 「身体所見が乏しい場合…

菊地臣一

p1-47 菊地臣一先生 父から、「お前は時代に左右されない職業を選べ」といわれた 卒後大阪市立大学脳神経外科へ 白馬明先生 頚椎のマイクロ手術を学ぶ カナダのMacnab 一生懸命やっていれば国境や人種、文化の壁を超えることができるのだという私の哲学はそ…

外科手術に上達くなる法ートップナイフたちの鍛錬法作者: 菊地臣一,安井信之,上田裕一,田中淳一,今明秀,仲田和正出版社/メーカー: シービーアール発売日: 2009/06/30メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見る

菊地臣一先生の箴言

菊地臣一先生の「次世代を担う君たちへ」という講演にあった、箴言を書き留めた 人生の扉は他人が開く 努力できることも才能である (Dr. Macnab) 笑顔と挨拶はただ 他人を肩書きで判断するな 何になったかでなく、何をしたかで判断 愚直な継続が大切 (自分…

腰痛をこころで治す 心療整形外科のすすめ (PHPサイエンス・ワールド新書)作者: 谷川浩隆出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2013/06/19メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る

不活動と痛み

沖田実、中野治郎、関野有紀、濱上陽平 不活動と痛み Practice of Pain management 2013;4(2):94-98 ヒトでも動物でもギプス固定などによる身体の不活動状態の惹起は痛みの発生を招き、しかも、不活動状態が長期化すると、その痛みは慢性痛へと発展する可能…

松原貴子 認知行動療法 Practice of Pain management 2013;4(2):100-105

慢性痛患者の認知と行動の歪み 難治性の慢性痛患者の思考パターンの特徴として、全か無かの完全主義、心の読み過ぎ・先読みの誤りから不安を感じて回避する傾向、”すべき”思考のために他者への怒りを潜在させやすい傾向などが知られている。 慢性痛患者にお…

こどもの痛み

西須孝 こどもの痛み 日本運動器疼痛学会誌 2013;5:53-60 こどもの痛みは、条件反射の如く「痛みの経験」と密接に関連しているように思えてならない 3歳以下の幼児では「いたい」という言葉を正しく使っていないことが少なくない 親が日常”腰痛い”というの…

慢性疼痛の認知行動療法とわが国での有用性

有村達之 慢性疼痛の認知行動療法とわが国での有用性 日本運動器疼痛学会誌 2013;5:49-524 慢性疼痛の認知行動療法の2つの特徴 認知や行動を変化させることで患者自身が痛み体験をコントロールできるという理論であり、患者自身による症状コントロールを強…

谷川浩隆 心療整形外科 日本運動器疼痛学会誌 2013;5:43-48

心身医学的アプローチは精神科や心療内科だけではなく、身体疾患を診るすべての診療科が取り入れるべき方法論であり、運動器疾患を扱う整形外科でも当然必要である 運動器疼痛の原因に心理的要因が関与していても、患者自身には疼痛という身体症状として感知…