松平浩、磯村達也 慢性疼痛の疫学研究 運動器疼痛に関わる疫学的知見の紹介 ペインクリニック 2013;34:S53-S61

  • 2009/1 本邦における慢性疼痛の実態を把握する目的でおこなったインターネット調査
  • 20-79歳の20044名
  • 慢性疼痛の点有病率 22.9%
  • 過去一年間に医療機関整骨院等へいったのは55.9%
  • 病院・診療所受診者における治療満足度では、45.2%が不満
  • EQ-5Dの国民平均は0.85、痛みにない人の平均は0.96
  • 危険因子
  • 西欧諸国では、人間工学的アプローチのみでは腰痛対策が立ちいかなくなった背景から、心理社会的要因の関与が重要視されるようになった
  • 支障度の高い腰痛の危険因子 (findings in JOB study & CUPID study)
    • 人間工学的要因
      • 新規発生 持ち上げ・前屈み動作が頻繁 25kg以上の持ち上げ動作
      • 慢性化 20kg以上の重量物取扱 and/or 介護作業に従事(持ち上げ・前屈み・捻り動作が頻繁)
    • 心理社会的要因
      • 新規発生 職場の人間関係のストレスが多い、過労働時間が60時間以上
      • 慢性化 仕事の低満足度、上司のサポート不足(人間関係のストレスが多い)、過労働時間60時間以上、家族が腰痛で支障をきたした既往、抑うつ、身体化徴候
  • 肥満は危険因子
    • JOB study 殿部から膝の下まで放散する坐骨神経痛が新たに発生した141名(18.4%)にかかわる危険因子を探索したところ、他要因を調整した多変量解析で、肥満(BMI 25以上)のみが有意が要因だった
    • カニズムとしては、肥大化した脂肪細胞が分泌するアディポカインおよびそれらが誘導する炎症性サイトカインが、神経障害性疼痛の発生に関与した可能性を考えている
  • 安静について
    • JOB study 安静群が翌年に「ぎっくり腰」を3倍以上のリスクで再発しやすい傾向にあった。加えて安静群の方が複数回再発を繰り返し安く、かつ慢性化する傾向にあった