松原貴子 認知行動療法 Practice of Pain management 2013;4(2):100-105

  • 慢性痛患者の認知と行動の歪み
    • 難治性の慢性痛患者の思考パターンの特徴として、全か無かの完全主義、心の読み過ぎ・先読みの誤りから不安を感じて回避する傾向、”すべき”思考のために他者への怒りを潜在させやすい傾向などが知られている。
    • 慢性痛患者においては、このような極端な思考傾向を持つ者が多いため、CBTでは痛みー行動日誌などセルフモニタリングを通して自己を観察し、”一気に完全に改善、大きな成果を求める”ことから、”小さな成果をたくさん集める”ように方向を転換させる。このような過程を経ることで、小さな達成感を確実にかつ数多く体験でき「自信」につなげることができるとともに、努力と対処の方策を蓄積し”気づき”と自己効力感(self efficacy)を強化・向上することができる
    • さらに慢性痛患者は、痛みそのもののほか、安静や固定、過剰な回避行動のために局所ならびに全身性の活動性が低下し、そのdisuseがさらに痛みを持続・増悪させ慢性痛の悪循環に陥っている。したがって、慢性痛患者では認知と行動の歪みを是正し、くわえて、活動性をしだいに改善、増量することでADLへの適応を目指す必要がある
  • 慢性痛に対するCBTでは、医療者・患者ともに痛みそのものや痛みの緩和を追求することなく、”痛みはゼロにはならないかもしれないが、たとえ痛みが完全に消えなくても、。自分(患者自身)で痛みを管理しながらADLを可能にし、QOLを向上させることを目指して、認識と行動を変えていく”ことが重要である
  • CBTで目指すところは、痛みの捉え方・考え方を変化させ痛み行動を是正していくこと
  • 慢性痛に対するCBTの進め方として
    • 第一(認知評価)に、否定的な思考などの認知の歪みを分析し、痛み行動のような不適応行動の成因、持続・増悪因子を抽出する
    • 第二(行動評価)に、痛み行動やADL制限につながる身体機能について理学的検査を行い、実際の身体機能レベルと不適応行動または痛み行動との因果関係を明確にする
    • 第三(認知介入)に、先の2点(不適応行動の成因・増悪因子などの身体機能レベル)の因果関係について説明し、患者の修正転換と客観的合理的認知の再獲得を図る
    • 第四(行動介入)に、不適応行動への関わりを最小限にするとともに適応行動への関わりを漸増し、行動の修正と再学習を図る