痛みによる負情動精製の神経機構

雅文 痛みによる負情動精製の神経機構 臨床精神医学 2013;42(6):715-723

  • 帯状回破壊による場所嫌悪反応の抑制は、痛みの情動的側面に特異的な脳内メカニズムによるものであると考えられる
  • 帯状回でのグルタミン酸神経情報伝達亢進が、負情動生成に重要な役割を果たしていることを示している
  • 帯状回内NMDA受容体を介したグルタミン酸神経情報伝達亢進が、痛みによる負情動生成に重要であることが示された
  • 扁桃体での情報伝達はホルマリン後肢皮下投与(体性痛)では、まず基底核外側に情報が入力され、次に中心核に伝えられて負情動が惹起されるが、酢酸腹腔内投与(内臓痛)では、基底外側核を経由せず、中心核に直接情報が入力されて負情動が惹起されるものと考えられる
  • 帯状回と同様に、扁桃体基底外側核においても、NMDA受容体を介したグルタミン酸神経情報伝達の亢進が、痛みによる負情動生成に重要な役割を果たしていることが示唆された
  • 基底外側核に投与されたモルヒネは、グルタミン酸作動性神経にシナプス前性に作用しグルタミン酸遊離を抑制することにより負情動を抑制するものと考えられ、モルヒネの鎮痛作用機序の一部に、痛みの情動的側面への効果が関与している可能性が示唆された
  • 痛み刺激により背側分界床核でCRF遊離が促進され、このCRF神経情報伝達亢進が、痛みによる負情動生成に重要な役割を果たしていることを示している
  • 背側分界条床核でのCRF神経情報伝達と同様に、腹側分界条床核内βアドレナリン受容体を介したノルアドレナリン神経情報伝達も、痛みによる負情動生成に重要んあ役割を果たしていることを示している
  • 痛み刺激時のCRFおよびノルアドレナリン遊離増大による分界条床核2型神経細胞の活動亢進が、分界条床核から腹側被蓋野に投射する神経を抑制し、腹側被蓋野ドパミン神経を抑止することが、抑うつや嫌悪などの負情動を引き起こす可能性が考えられた
  • 痛み刺激により、1分界条床核内でCRFおよびノルアドレナリン遊離が増大し、2GABA作動性の2型神経細胞が活動亢進すると、3分界条床核から腹側被蓋野に投射するGABA作動性投射神経の活動が抑制され、4脱抑制により腹側被蓋野内GABA作動性神経が活性化され、その結果、5腹側被蓋野ドパミン神経活動が抑制されることで、抑うつや嫌悪などの負情動が惹起させるものと考えられる