笠原諭、関山裕詩 他科との連携 ペインクリニック 2013;34:S249-S261

  • 急性痛のような、「生物学的な痛みの原因を除去すれば、痛みは寛解し機能障害は減少する」という生物医学モデルでは不十分で、生物心理社会モデルに基づいて評価することが重要になる
  • 橋爪らは、慢性疼痛における身体表現性障害を精神科紹介で対処するのは困難であり、現時点においては、1ペインクリニック医が精神科的診療を研修して自身で対応するか、2精神科医心療内科医をペインクリニックのスタッフに引き入れるか、いずれかの選択肢が最も現実的と思われると述べている。しかし、痛みに関心のある精神科医臨床心理士は非常に少なく、獲得することが困難であり、それらが現れるのを待つというスタンスではいつまでも問題は解決しない
  • 上記の心理テストバッテリーを用いて心理査定を行い、その結果を基に簡便な認知行動療法や精神科薬物療法(特に気分安定薬抗精神病薬)、エゴグラムを用いた家族システムへの介入までできるペインクリニック医を、「psycho-anesthesiologst」と呼ぶことを筆者は提唱している
  • 慢性疼痛は、心因と性格要因の相互作用によって生じるものと言い換えることができる
  • 多くの慢性疼痛患者は、その症状の背後に無意識に心因を隠している(抑圧している)。それは欲や情などの“人間臭さ”を含んでおり、話を一通り聞いて推定できるのは、病態に深くかかわる心因ではないと考えた方がよい。また、厳密にいえば、心因が除去され、その結果として痛みが消失したとき、結果的にそれが心因だったとわかることも多く、当初から簡単に同定できるものではない。また、既存の心理検査の中に、単独で慢性疼痛の精神面の問題をすべて評価できるものはない。そこで、目的のことなったいくつかのテストを組み合わせて実施することにより、多面的に被験者の心理を把握する“テストバッテリー”を用いることが有効である
  • ペインクリニックの多くの患者が、人格面での異常な偏り(多くは心理的葛藤を身体化する“転換V”パターンを示す)を有しており、それらは身体表現性障害である可能性が高く、また、ペインクリニックにおけるコモンディジーズの一つであるとも推測される。