- 「希望すること」、「きっと快くなると期待すること」が脳活動を刺激し、いかに生命機能を一変させるか、その機序の一端がみえてきた
- placebo鎮痛のメカニズムの中心となるのは、mesolimbic dopamine systemとopioid system
- 右の側坐核(rNAc)におけるdopamine活性が大きい時ほど、μ-opioid活性が大きく増加し、そしてμ-opioidの増加に相関して被験者のpain ratingが低下した
- dopamine性神経伝達が顕著であった神経核 側坐核NAc,腹側被蓋(ventral putamen)
- μ-opioid受容体活性が顕著であったのは 側坐核NAc,吻側前帯状回(rACC),眼窩前頭皮質OFC、扁桃体Amy、前頭皮質 anterior insula、中脳水道周囲灰白質 PAG、視床背内側部
- placebo鎮痛 鍵となったのは「効きそうだ」「きっと効く」という期待/予測だけである
- 被験者が「効きそうだ」「きっと効く」という期待/予測をしなければ、dopamineもμ-opioidも分泌されないのである。この研究により、noceboとplaceboの違いは、NAcにおいてdopamine & μ-opioidが活性化するか、しないかの違いであることがわかった
- 現在ではplacebo鎮痛の際に、前頭葉ー辺縁系ー橋ー延髄のさまざまな神経核でopioid活性がたかまることがわかっている
- 疼痛抑制系がうまく機能せず、促進系とのバランスがとれないことが慢性疼痛の主因になることは、本連載で繰り返し述べてきた
- placebo鎮痛が成り立つためには、学習や認知機能、前頭葉の活動とのリンクが必要である。アルツハイマー疾患や脳血管障害性のdementiaではplacebo減少はおこらない。期待や希望の存在しないところにplaceboは成立しない
- ほんのささいな「期待」と「報酬」であっても、期待、報酬、快の情動、行動のサイクルが循環しだすと、生命活動と想像力は盛んになる。期待/希望、快の情動がもたらす脳活動は大きく、「快楽が脳を作る」とさえいわれている。