松平浩、磯村達也、犬塚恭子、石塚朗子、有坂真由美、藤井朋子 心理社会的要因は、仕事に支障をきたす慢性腰痛への移行につよく影響しているか 厚生の指標 2012;59(1):1-6

  • 我が国での産業衛生的アプローチは、画像所見を参考にしつつ人間工学的問題を主に対策を講じているのが現状であり、心理社会的要因にも十分に配慮したうえで危険因子を探る目的の前向き研究はほとんどおこなわれてこなかった
  • そこで我が国における勤労者の「仕事に支障をきたす非特異的腰痛」の危険因子について心理社会的要因を含む多因子のなかから探索することを主目的とし、JOB(japan epidermiological research of occupation-related back pain) study (日本における職業性腰痛の疫学的研究;ジョブスタディ)を実施した
  • 本解析の結果では、仕事に支障をきたす慢性腰痛の移行には、重量物の取り扱いや介護作業(前屈、持ち上げといった動作)、つまり腰への身体的な負荷要因のみならず、働きがいの低さ、上司のサポート不足といった職業性の心理社会的要因に加え、身体化傾向であること、そして家族に日常生活や仕事に支障をきたした腰痛既往があることが重要な因子として関与していた。
  • 働きがいの低さ(仕事の満足度)、上司のサポート不足、身体化といった典型的な心理社会的要因が重要な危険因子であったことは、欧米におけるシステマティックレビューでの知見と矛盾しなかった
  • メンタルヘルス対策も踏まえ包括的に設計した充実感や達成感のある職場環境の整備、言い換えればワークエンゲージメントの向上を目指した対策も、今後の腰痛の難治化予防対策として重要視すべきと考える
  • 本研究の結果を踏まえた非特異的腰痛の難治・慢性化の予防・治療対策のコンセプト 腰へかかる負担に関わる問題と心理社会的な問題へのアプローチを車の両輪とした包括的な対策案