- 腰痛の原因、慢性・難治化する危険因子とも、脊椎への負荷にかかわる問題が主因の場合、すなわち脊椎dysfunctionと、心的ストレスが主因となる場合、すなわち脳dysfunctionに分けて考えると理解しやすい。脊椎と脳のdysfunctionは共存しうるが、臨床医は種々の腰痛患者のおいてどちらの問題が主因であるかを把握するとアプローチ法が明確になる。
- 脳へのメカニカルストレスにかかわる問題
- 解剖学的な原因(発痛源)の特定は難しい
- 椎間板造影 Carrageeら 前向き研究の結果、その疼痛誘発は疑陽性が少なくなく、心理的苦悩や恐怖回避思考のほうが活動障害を伴う腰痛を予測すると述べており、椎間板性であるかを判定できると結論付けることは難しいのが現状であろう
- 疫学研究から示されている危険因子
- システミックレビューより、前屈動作、回旋やねじり動作、中腰といった不自然な姿勢は腰痛と関連が強く、これらが複合的に行われる持ち上げ動作が頻繁であるといった重労働に従事していることは、新規発生のみならず慢性化の危険因子である。
- 臨床現場で遭遇することの多いサブグループのderangement syndrome
- 心的ストレス(心理社会的要因)が主因の場合
- 身体化徴候、低い仕事の満足度、低いソーシャルサポートは、筆者らによる本邦勤労者を対象にした前向き研究でも統計的に有意な因子であった
- 腰痛の慢性化・難治化リスクに基づくサブグループ化(ハイリスクグループ群のスクリーニング)
- STarT(subgrouping for targeted treatment) Back スクリーニングツール
- 終わりに
- 我が国では、心理社会的要因のなかの恐怖回避思考に対する認識が乏しかったが、これは最も主要なyellow flagの一つである。恐怖回避思考傾向が低いことは一年後の回復を予想し得る。エビデンスに基づいた急性腰痛に対する医療者の態度は、「患者を安心させる」「活動を維持するように助言する」「安静臥床は勧めない」であるが、それは恐怖回避思考を強めない説明でもある