身体症状症

吉原一文、須藤信行 身体症状症 日本内科学会雑誌 2018;107(8):1558-1565

  • 身体症状症とは、「身体症状に関連した過度な思考、感情または行動に関連があり、その苦痛を伴う身体症状が長期に持続する疾患」である
  • 身体症状性は、身体症状に対する反応としての過度な思考、感情または行動に基づいて診断され、DSM-4のように、身体症状に対して医学的に説明できるかどうかは問われなくなった
  • そのため、気管支喘息アトピー性皮膚炎等の身体疾患による身体症状であっても、症状に対する不安や極端な思考が持続する場合には、身体症状症と診断されるようになった
  • 病因・病態
    • 患者の気質(感情や行動に表れる特有の傾向)
      • 否定的感情(神経症的特質)のパーソナリティ
    • 環境要因
      • 教育歴、社会経済的地位が低い、ストレスフルな生活上の出来事を経験、幼少時に虐待
    • 経過の修飾因子
    • 患者の認知的要因
      • 疼痛の感受性、身体感覚への過剰な注目、および身体症状を正常な現象または心理的ストレスと認識せずに、可能性のある医学的疾患に結びつけること
  • 心理社会的背景の聴取
    • 幼少期の虐待・ネグレクトやいじめ以外にも親の過干渉が症状に関連していることも少なくないため、幼少期の生育歴の聴取は重要
    • パーソナリティ特性に関しては、神経症的特質以外にも、自分の感情にを表すことが難しい「失感情症」や「完璧主義」「過活動」と関連していることがある
    • 発症を誘発させる要因(誘発因子)としては、発症前の生活上の重要な出来事(ライフイベント)が関連していることがある
    • 持続因子 退職や休職で収入が現象、家族や友人関係が悪化 過度の不安や孤独感、怒り、罪悪感など
  • 活動量の増加により症状が持続・増悪している場合
    • 活動レベルの管理(ペーシング)をおこなう
    • 活動量には、身体活動量だけでなく、精神活動(脳活動)量が増加し、翌日以降に症状が増悪する可能性が高い。そのため、翌日以降に症状が増悪しない程度に身体活動量と精神活動(脳活動)量をコントロールすることが重要である