身体症状症および関連症候群 ー身体症状症を中心に

大江美佐里 身体症状症および関連症候群 ー身体症状症を中心に 臨床精神医学 2014;43(増刊号) 134-138

  • 身体症状症の登場にあたって、American Psychiatric Associationのfact sheet
  • メンタルヘルスと身体的健康との間の複雑な接点をよりよく反映する分類となったと変更の意義が強調されている
  • 身体症状症という疾患を新設した2つの重要ポイント
    • 以前の身体化障害で特に目立った、「4つの疼痛症状、2つの胃腸症状」といった症状数のカウントが不要となった
    • 主訴(身体的愁訴)のありようがほかの医学的状況と関連があるのかないのか、という点を問わないことである。医学的診断がついていようがいまいが、診断基準を満たせば身体症状ということになる
  • DSM-5による変更は、精神科を専門領域としない、たとえばプライマリケアの領域で役荷立つことを期待しておこなわれたという。要は、これまでこの領域の診断名はあまりに専門的で、理解しづらい用語が使用されていたとの主張である
  • DSM-IVでは医学的説明がつかない、ということを中心に捉えていたが、DSM-5では身体症状に関する患者の思考・感情・行動の不適切さ、過剰さの程度が主題である、と論じている
  • 悪性腫瘍や心疾患など、実際の身体疾患と身体症状症の併存診断が推奨されていると解釈できる文章もあり、現在のうつ病のように身体症状性も身体疾患と同様に取り扱われ、治療されるべきだという考えがうかがえる
  • 病気不安症は、DSM-IVにおける心気症のうち、身体症状の訴えが全く無いか、あっても極軽度のものが該当する。逆に言えば、もし心気的な訴えがあっても、身体症状の程度がある一定以上になっていれば、もはや病気不安症とはせず、身体症状症としなければならない
  • 「身体症状症」登場への批判
  • DSM-IVの作成委員であったFrancesは、「身体症状症により、多くの身体症状を持つ患者が精神疾患という誤った診断を受ける」と主張している
  • 前述のworkgroupが行った調査では、悪性腫瘍や心臓疾患の患者の15%,過敏性腸症候群の26%が身体症状症と診断されることを取り上げ、この割合は高いと指摘した
  • また、身体症状症には、ほかの精神疾患による除外がないことも問題があるとした。
  • 一般人口中の健常人サブグループでも7%が偽陽性となりうる診断名に対して、「何百万人もの人間に対して誤ったラベリングがなされる可能性があり」「臨床家は新カテゴリを無視することが望ましい」と挑発的な文言も付け加えつつ、医学的問題んに対する精神科診断をつけるのであれば、適応障害がより望ましいとの見解を表明している
  • 精神疾患の診断の水門を開き、内科疾患の見落としを生みかねないと指摘している
  • B基準に記載されている、「過剰な excessie」「不釣り合い disproportionate」「強い high level」
  • PHQ-SSSなる質問票による (論文化されていない)
  • プライマリ・ケア医に「身体症状症」を広めるべきか?
  • Francesのいうように、「身体愁訴が主治医にとって過剰で、考えすぎに思えたら、それは精神科の病気ですよ」と教え、安易なレッテル貼りを助けるということになるおそれがある
  • 精神科医の役割としては、逆説的ともいえようが、身体症状症として他科から紹介された患者に対して、抑うつ症状はないか、不安症状はないか、不眠はないかなど、身体愁訴にとどまらないあ精神症状のアセスメントを行うということになろう