なぜACTは身体症状症の改善に有効であり得るのか?

武藤崇 なぜACTは身体症状症の改善に有効であり得るのか? 精神科 2020;62(12):1633-39

  • 身体症状症とは「身体症状に関連した過度な思考、感情、または行動に関連があり、その苦痛を伴う身体症状が長期に維持する疾患」である。つまり、身体症状性は、身体症状に対する反応としての過度な思考、感情または行動に基づいて診断され、DSM-IVのように、身体症状に対して医学的に説明できるかどうかは問わなくなった。そのため、気管支喘息アトピー性皮膚炎などの身体症状による身体症状であっても、症状に対する不安や極端な思考が持続する場合には、身体症状症と診断されるようになった
  • つまり、糖尿病、心疾患、気管支喘息アトピー性皮膚炎などの身体疾患があり、かつ身体症状に関連した過度な思考、感情または行動が観察された場合にSSDと診断され、一方、過敏性腸症候群線維筋痛症であっても、そのような過度な思考、感情または行動が観察されなかった場合にはSSDと診断されないことになる。換言すれば、身体症状とは、症状の心理的側面が問題の中核として扱われるべき疾患分類と言えるだろう
  • ACTは、心理的柔軟性を促進させることによって、言語によって増悪された逃避・回避行動を軽減させ(=アクセプタンス)、同時に、言語によって増強されたクライエント自身に見合った適応的行動を生起・拡大させる(=コミットメント)ことを目的としている
  • 心理的柔軟モデル
  • 「オープンに」、「集中して」、「従事して」という3つの反応スタイルで構成されている
  • 下位プロセス 「オープンに」という反応スタイルは「アクセプタンス」と「脱フュージョン(defusion)」
  • 「集中して」という反応スタイルは「今、この瞬間(resent moment)」と「文脈としての自己(self-as-context)」
  • 「従事して」という反応スタイルは、「価値(value)」と「コミットされた行為(committed action)」
  • アクセプタンス 嫌悪的な思考、感情、身体感覚などの心理的体験を避けたり、取り除こうとしたりせずに、意図的に「捉える」こと
  • フュージョン 思考を額面通り(字義通り)に受け取ってしまうという傾向を減少させ、思考自体を現在進行中のプロセスとして体験すること
  • いまこの瞬間との接触 過去や未来に関する思考にとらわれずに、現在進行中の内的・外的体験に注意を向けたり、記述したりすること
  • 文脈としての自己 「自分はーーである」といった自己概念にとらわれずに、単なる「視座」として自己を捉えること
  • 価値 進行中の行動が持っているポジティブな側面(ただし、物質的なものではない)のこと
  • コミットされた行為 同定された価値に基づいた具体的なアクションを持続的に生起させ続けること
  • 名古屋市立大学いたみセンターに置いて、ACT集団プログラム(「のびやかプログラム」)が実施され、その効果が検証されつつある