身体症状症

宮地英雄 身体症状症 精神科治療学 2017;32(8):1003-1007

  • 身体症状症は、DSM-5から登場した用語で、身体化障害の後継とされるが、身体障害の身体基準では身体症状が厳しく規定されるのに対し、身体症状症では身体症状に対する思考、不安、行動を基準の核にしており、むしろ従来の心気症に近いとも言える
  • DSM-5では、「身体症状に対して医学的説明ができないことよりむしろ陽性の症状および兆候(苦痛を伴う身体症状に加えてそうした症状に対する反応としての異常な思考、感情、および行動)に基づく診断が強調されている
  • 「身体症状症」の概念をまとめると、「苦痛を伴う日常生活に支障を生じる、持続する身体症状が存在するが、その身体症状に関する明確な規定はなく、その身体症状、またはそれにともなう健康への懸念に関連した過度で持続する思考、感情、または行動」となる
  • 身体症状については、「疼痛を主症状とするもの」が「該当すれば特定」するよう指示がある
  • DSM-5における、身体症状に関連した疾患群の改定、整理の大きな目的は、「重複による曖昧さをなくす」ことにあるとされる。身体疾患の有無や程度、質を重視せず、過度の思考や不安を核に置くことで、(結果的かもしれないが)「心気症」の概念の一部が組み込まれ、それにともない心気症の名称が消えている
  • ポイントは、この疾患の核となる「思考や不安」を、どのような状態や程度で「過剰」と考えるか、であろうか
  • この点は身体科医のみならず、精神科医が、患者がどの程度の思考や不安を持つなら「過剰」としてようかを考えおく必要がある