吉原一文、須藤信行 身体症状症 日本内科学会雑誌 2018;107(8):1558-1564
- 身体表現性障害とは、「さまざまな苦痛を伴う身体症状が長期に持続し、適切な検査を行っても身体症状を医学的に説明できる異常が認められない疾患」であり、DSM-3(1980)によって初めて採用された概念である
- 2013年に改定されたDSM-5では「身体表現性障害」から「身体症状症および関連症群」という疾患カテゴリーに変更
- 身体症状症とは、「身体症状に関連した過度な思考、感情または行動に関連があり、その苦痛を伴う身体症状が長期に持続する疾患」である。つまり、身体症状症は、身体症状に対する反応として過度な思考、感情または行動に基づいて診断され、DSM-4のように、身体症状に対して医学的に説明できるかどうかは問われなくなった
- 身体症状症の診断には、以下のDSM-5の診断基準を用いて診断する
- 基準A:1つまたはそれ以上の苦痛を伴う、または日常生活に意味のある混乱を引き起こす身体症状
- 基準B:身体症状、またはそれに伴う健康への懸念に関連した過度な思考、感情、または行動で、以下のうち一つによって顕在化する
- (1) 自分の症状の深刻さについての不釣り合いかつ持続する思考
- (2) 健康または症状についての持続する強い不安
- (3) これらの症状または健康への懸念に費やされる過度の時間と労力
- 基準C: 身体症状はどれひとつとして持続的に存在してるかもしれないが、症状のある状態は持続している(典型的には6ヶ月以上)
- 該当すれば特定せよ
- 疼痛が主症状のもの(従来の疼痛性障害):この特定用語は身体症状が主に痛みである人についてである
- 該当すれば特定せよ
- 持続性:持続的な経過が、重篤な症状、著しい機能障害、および長期に渡る持続期間(6ヶ月以上)によって特徴づけられる
- 現在の重症度を特定せよ
- 軽度:基準Bのつち一つを満たす
- 中等度:基準Bのうち2つを満たす
- 重度:基準Bのうち2つ以上を満たし、かつ複数の身体愁訴(または一つの非常に重度な身体症状)が存在する
- 身体症状症を指弾する客観的な指標はない
- 家族が患者を心配することによって患者の問題行動を強化することにつながったり、家族間のコミュニケーション等の問題が患者の症状を悪化させたりすることがある。家族は、患者の対応に苦労し、援助を必要としている場合もある
- 幼少期に虐待・ネグレクトやいじめ意外にも、親の過干渉が症状に関連していることも少なくないため、幼少期からの生育歴の徴収は重要である。パーソナリティ特性に関しては、神経症的特質意外にも、自分の感情に対して鈍感で、自分の感情を表すことが難しい「失感情症」や「完璧主義」、「過活動」と関連していることもある。発症を誘発させる要因(誘発因子)としては、前述したように、発症前の生活上の重要な出来事(ライフイベント)が関連していることがあるため、これらの情報を聴取する必要がある
- 生育歴やパーソナリティ特性、誘発因子、持続因子、増悪因子等の心理社会的要因がどのようにそれぞれの患者の病態に関与しているか検討し、医師は病態仮説をたてることが重要である。
- この病態仮説に基づいて、患者一人ひとりの現在の状態や段階に応じて、薬物療法と心理療法を含む非薬物療法を組み合わせて治療計画をたてる。ただし、症状は時間の経過とともに変化するため、定期的に患者の状態を評価し、必要に応じて治療計画を変更する必要がある