木村宏之 高齢者の身体症状症 日本臨床 2018;76(suppl 7):89-93
- 診断
- A 中心的な概念
- 1つまたはそれ以上の、苦痛を伴う、または日常生活に意味のある混乱を引き起こす身体症状
- B 疾患の特徴
- 身体症状、またはそれに伴う健康への懸念に関連した過度な思考、感情、または行動で、以下のうち少なくとも1つによって顕在化する
- 1) 自分の症状の深刻さについての不釣り合いかつ持続する思考
- 2)健康または症状についての持続する強い不安
- 3)これらの症状または健康への懸念に費やされる過度の時間と労力
- Bは重症度の基準となり、軽度は基準Bの一つを満たす、中等度は2つを満たす、重度は2つ以上を満たし、かつ複数の身体愁訴
- C 持続期間
- 身体症状はどれ一つとして持続的に存在していないかもしれないが、症状のある状態は持続している(典型的には6ヶ月)
- DSM-IVまでは、器質的疾患の除外が診断基準にあった
- DSM-5の身体症状性は、「医学的に説明できない」ことよりも「苦痛を伴う身体症状と、それに対する異常な思考・感情・行動」に主眼が置かれた。その理由として、1)医学的説明ができないという決定の信頼性に限界があること、2)医学的説明ができないことを基礎とした診断は、心身二元論のみを強化する可能性があること、3)医学的疾患の存在は、診断を除外するものではないこと、4)医学的説明ができないことが強調されることにより、患者がその診断を屈辱的にとらえやすいこと、などが考えられている
- 高齢者の身体症状に対する精神療法的接近の具体的ポイント
- 1) 患者の訴えが執拗であっっても支持的に受け止める
- 2) 短期間の症状軽快を目標とせず、症状とゆっくり付き合って生活することを目標とする
- 3) 身体疾患の可能性に留意し、必要に応じて簡単な身体診察や検査を行う
- 4) 症状を強化する心理社会的ストレスに目を向けるように促す
- 医療者の基本姿勢は、「高齢者のペースに合わせながら気長に付き合うこと」が肝要と思うが、言うは易く行うは難しかもしれない