松永寿人 身体表現性障害(身体症状症)におけるこだわり 臨床精神医学 2017;46(8):1001-1007
- DSMーIVまでの身体表現性障害カテゴリーは、身体に関する症状が主訴となるものを漠然とまとめたものとなっており、この妥当性を疑問視する意見も少なくなかった
- DSM-V 身体症状症および関連症群
- 身体症状症
- 中核臨床像は、「一つあるいはそれ以上の、苦痛を伴う、または日常生活上の有意な混乱を引き起こす身体症状の存在」
- それが医学的に説明可能かどうかを問わない
- この身体症状はいかなる部位にでも起こりうるもので、疼痛や消化器症状(悪心、嘔吐、嚥下困難など)、以上な皮膚感覚(掻痒感や灼熱感、うずき、しびれなど)、性や月経に関するものなど、その内容は多彩である
- このような身体症状の数は、不安やうつ、一般身体疾患などと有意に関連し、健康状態やうつあるいは身体疾患の予後に悪影響を及ぼずとされている
- これらの症状は、1 自分の症状の深刻さに不釣り合いかつ持続する思考、2 健康または症状についての持続する強い不安、 3 これらの症状または健康への懸念に費やされる過度の時間と労力、などの少なくとも1つを伴い顕在化
- これが重度で持続性であれば、健康への懸念が生活の中心事となり、人間関係などにも深刻な影響を及ぼすことになる
- またSSDに関連してみられる行動上の特徴、たとえば異常がないかどうか繰り返し身体を確認する、医学的な支援や保証を繰り返し求める、身体活動を避けるなどが、重度であるほど顕著となりやすい
- この疾患の患者は、病気に関する極めて高い心配傾向が特徴的であり、身体症状をひどく恐ろしく有害なものと捉え、しばしば健康状態について最悪のことを想定する。このため通常は、精神科でなく一般診療科を受診する
- Francesの指摘のように、精神的苦痛を伴う身体疾患患者においてSSDの過剰診断が危惧され、その診断基準の信頼性や妥当性が疑問視されている
- 病気不安症
- 従来の心気症では、身体症状関する誤った解釈に基づき、自分が重篤な病気に罹る恐怖、または病気に罹っているという観念へのとらわれが中核症状だった
- 病気不安症では、身体症状が存在しないにも関わらず、あるいは頭痛や耳鳴、腹部不快感などの軽微な身体的特徴や症状について、自分が何か重篤な病気に罹患している、あるいはそのような病気に罹りつつあるという不安にとらわれる。
- DSM-5 基準C 「健康に対する強い不安」、かつ「健康状態について容易に恐怖を感じる」ことが必須であり、患者は過度の健康関連行動(病気の兆候が出ていないか繰り返し身体を調べる、頻回に受診する、インターネットで調べる、家族や医師から繰り返し保証を求めるなど)、あるいは不適切な回避を示す(基準D)
- 頻繁に「医療を求める型:か、強い不安から医療を滅多に受けずに回避している「医療を避ける病型」かと特定する必要がある
- 小児期の被虐待体験、重篤な病気の既往、家族が病気になるという過去の経験が、この発症に関連する可能性がある。さらには加齢や死の恐怖を認めることが多い
- 従来心気症の診断を受けてきた人の75%は身体症状症に組み込まれ、残りの25%の多くは身体症状を伴わず、全般不安症やパニック症など他の不安症にも該当せずに強い健康不安を呈しており、病気不安症の診断基準に合致するという