身体症状症の連携・集学的治療

杉浦健之、太田晴子、藤澤瞳、酒井三枝、近藤真前 身体症状症の連携・集学的治療 精神科 2020;62(12):1641-1649

  • DSM-5において新しく定義された身体症状症(somatic symptom disorder;SSD)は、苦痛によって生活障害を来すような身体症状とその症状に関する不釣り合いな思考や感情、さらにその症状に対する過度の行動に特徴づけられる
  • 国際疼痛学会は3番目の概念である”nociplastic pain (痛覚電動系、とくに中枢神経の可塑的変化によって生じる痛み)”を新たに提唱している
  • ICD-11では、”他の病態では説明困難な”痛みが3ヶ月以上続くものを慢性一次性疼痛(chronic primary pain)として分類し、著しい感情的苦痛、日常生活や社会的役割への機能障害と関連する痛みと説明している
  • 身体科を受診する患者の中には、”心因性”や”心理的問題”に対する抵抗感を有する患者もおり、心理社会的背景について言及する際には注意を要する。
  • ”現在の医療水準で痛みの原因が同定できなくても、あなたの脳が痛みを強く感じていることは十分理解できる”と、患者の訴える痛みへの理解と共感を示すことが重量である
  • 多くの慢性痛患者における治療目標は、痛みへのとらわれからの解放、ADLの改善、QOLの向上とすべきであり、痛みの緩和にのみとらわれないのが重要である
  • また、適切な目標設定は、自己効力感の向上、薬物や医療者・家族への過剰な依存から自己主導型への転換に繋がり、治療継続のモチベーションとなり得る
  • 痛みを含め過剰な身体症状のや疼痛行動の表象化は、不適切な感覚・痛覚認知や自律神経・内分泌の動員の結果かもしれない
  • 身体イメージの処理過程やさまざまな感覚入力の統合障害、内受容感覚からの間違ったフィードバックが、慢性痛の病態として重量な役割を果たしているというモデルも提唱され、一次性慢性痛やSSDの病態にも関与している可能性が考えられる