細井昌子 痛みと心身医学 MB Med Reha 2007;79:13-20

  • 慢性疼痛の治療 患者の苦痛、困難、苦悩をいかに多面的に理解し、患者の感情の安定化を図り活動性を上げていくかが慢性疼痛の治療の鍵
  • 痛みは主観的な不快な感覚体験のみでなく、不快な情動体験であるという観点が重要であり、本人が痛みを表す言葉でその体験を表現していることに注目している定義
  • 温痛覚の神経伝導路である脊髄視床路が、痛み感覚を伝える外側(新)脊髄視床路と痛み情動を伝える内側(旧)脊髄視床路に分かれていて、この2つの経路で伝えられる情報が複合されて痛み体験として個体で体験される
  • 帯状回を切除された患者は、侵害刺激の局在、強度や質の理解は変わらないが、痛みがあっても不愉快でなく気にならないという片がおこる
  • 痛み体験のなかで、最もヒトを困らせているのは内側脊髄視床路がつたえる痛み情動である
  • 痛み感覚と痛み情動感覚の療法を治療対象にするのが痛みの心身医学的治療
  • 痛みはあるが気にならない状態を作り出す
  • 患者の抱えている心理的葛藤へも注意をむける必要性がある
  • 疼痛性障害の多面的病態評価
    • 生物学的な器官的および機能的病態
    • 不安抑うつなおどの情動の変化
    • 性格傾向や人格障害発達障害の有無
    • 痛みに対する認知と対処法
    • 行動医学的観点から観た疼痛行動のパターン
    • 身体的精神的障害に伴う痛みによる生活障害
    • 家族や社会システムでの役割機能障害
  • 生物医学精神医学的診断 強迫性行動パターン
  • 認知行動学的診断
    • 痛みについて繰り返し考える(反芻)、痛みのためにひどく悲観的になる(破局化)
    • 慢性疼痛の持続増悪に関与する認知的要因として、痛み体験を否定的に捉える傾向である破局的思考(catastrophizing)が臨床的にも重要
  • 痛みとリハ
    • 痛みのためにひたすら安静を保ち、拘縮が起こり末梢循環が悪化し、さらに痛みが悪化
    • 患者の破局化傾向が周囲の家族や医療スタッフに伝染し、医療スタッフが破局か傾向になるのが2時的な問題