身体症状症への薬物療法の進歩と課題

名越泰秀 身体症状症への薬物療法の進歩と課題 精神科 2020;62(12):1613-1621

  • 薬物療法を目的とした場合、SSDの病態を強迫、不安・恐怖、怒りの3つの分類するのが実用的である
  • SSDによる疼痛には、神経障害性疼痛や中枢性感作による疼痛へのNA系の薬剤の有効性とは対照的に、SSRIなど5-HT系の薬剤が有効である。このことは、SSDによる疼痛には強迫による病態が多いことを示唆する
  • α2δリガンドであるプレガバリンは、我が国では疼痛への適応しか取得していないが、不安・恐怖の中枢である扁桃体から種々の脳部位に投射するグルタミン酸神経に作用し、その過剰な興奮を抑制し、不安・恐怖を軽減する。このため、海外では多数のRCTで全般性不安障害や社交不安症への有効性が示されており、EUでは前者への適応も取得している
  • 治療導入におよび長期経過における薬物療法の位置づけ
  • 強迫によるSSDの場合、身体症状への固執が強いため、現実的には薬物療法を行ってからでないとCBTに導入するのは難しいであろう
  • 逆に、不安・恐怖によるSSDの場合は、CBTへの導入は比較的容易であり、後述する長期予後の問題を考えると、あえて薬物療法を行わず、CBT単独で治療するという方法も考慮すべきである