清水栄司 身体症状症の認知行動療法 精神科 2020;62(12):1623-1632
- 身体症状症による日常生活への支障の改善を治療の目標とする
- 慢性的な身体症状による破局的な認知に伴う注意、感情、行動の悪循環へ焦点化する
- 注意のバイアスに気づき、安全行動をやめて、破局的な認知を再構成するための行動実験を行う
- 身体症状それ自体は残存したとしても、日常生活への支障が顕著に改善することで、患者のQOLは高まるので、好循環が維持されるように再発防止での般化を行っていく
- 身体症状症の診断において軽度以上の身体症状がある場合、症状レベルで重症度をPHQ-15によって測定することが推奨されている 5-9点軽度、10-14点中道度 15-30点重度の症状レベルであると評価する
- DSM-5の身体症状症の診断基準は、(A)1つあるいは複数の身体症状がつらく、日常生活の妨げになっていて、(B1)重症度についての不適切で持続的な思考、(B2)健康や症状についての持続的に高いレベルの不安、(B3)症状や健康の心配に過剰な時間とエネルギーを費やすことのどれか一つがあり、(C)6ヶ月以上持続していることとなっている
- 医学的に説明できな身体症状;MUPSに苦悩する患者は、「精神的なもの、気のせい、病は気から」などのように扱われることに大きな抵抗感を持ち、受け入れることができない
- 慢性疼痛の患者に対して、「疼痛の強さ」の減少、改善のみを焦点化した目標設定をすることは、患者と医療者の治療同盟を破滅させることになり得る
- 患者には、疼痛の強さが弱まることよりもむしろ、疼痛による生活の支障が改善することの注目してもらうとよい
- PCS 52点満点で31点以上 破局的認知が強い
- 身体症状症に関する破局的認知は、身体症状がもっとひどくなるに違いない、この身体症状のせいで人生おしまいだ、この身体症状は自分にはどうすることもできないなど、身体症状を世界の終末(破局)のような最悪の出来事と極端に解釈し、その身体症状にとらわれてしまい、繰り返し考え続けてしまう否定的な認知のことであり、破局的認知による悪循環を変えていく必要がある
- マンツーマンで行う個人精神療法(心理療法)は、技法的にCBT、精神力動的心理療法、来談者中心療法の3つの分類される
- CBTとは、1)現在の認知と顕在行動の修正に焦点を置く、能動的、指示的、時間限定的、構造的な精神療法のことであり、2)精神疾患の問題行動が維持される認知的、行動的因子の詳細な病因モデルを基盤として、治療法が工夫され、3)比較対照試験によって治療法の有効性を証明し、そのモデルの妥当性を科学的に検証する心理療法(精神療法)のことである
- 認知行動モデルでは非機能的な認知や行動、感情を主要な要素として取り上げ、これらが相互に影響しあい、悪循環が形成されることにより、さまざまな症状が発現していると考える
- CBTはこの悪循環を良循環に変えるために、非機能的な認知や行動、感情に気づき、各要素の状態を把握し、歪を修正する結果、感情や身体反応に与える悪影響を軽減し、精神症状を改善することを目標としている
- 身体症状症に対する認知行動療法の実際
- 導入時に、治療者は身体症状に、十分な傾聴、共感、受容をもって接する必要がある。そして、可能ならば、身体症状に対する「破局的な認知」を再構成することにより、患者の日常生活障害が改善されうることを共有する
- リラクゼーションが受け入れやすいかもしれない 例 呼吸法、漸進的筋弛緩法、イメージ療法
- 身体症状には過剰な注意を払う割には、自分の内部の感情については無関心である場合がある
- ケースフォーミュレーション
- 注意シフト
- 近年、不安症群のCBTの研究から、認知、行動、感情(身体反応)に加えて、注意がバイアスにより症状維持の悪循環を形成し、注意のバイアスの修正(注意シフトトレーニング)がCBTの重要な手法となって
- 「身体症状への注意のバイアス」の悪循環、すわなわし、「身体症状」に過剰に「注意」を向けると、「苦痛(つらさ、不快感)、不安感」が強まり、その苦痛がさらに身体症状への注意を喚起し、身体症状を維持または悪化させる悪循環を理解してもらう
- さらにその悪循環を断ち切るために、身体症状に偏りがちな患者の注意を柔軟にするための技法として注意シフトトレーニングを紹介し、練習する
- 注意シフトでは五感のいずれかを用いて、注意を柔軟に移動させる(シフト)練習を行う。注意シフトは、マインドフルネスに通じる技法である
- 安全行動(例外の症状を持続・悪化させている行動)の分析
- 完璧主義的に絶対の安全を求めるために、小さなリスクですらとることをしないために、身体症状を維持、悪化させる不適切な行動を「安全行動」と呼ぶ
- 身体症状症の場合の安全行動は、1)医師に過度の検査や治療を依頼し、必要以上の再保証、安心を求め続ける行動、2)身体症状についてインターネットで調べ続けて、必要以上の再保証、安心を求め続ける行動、3)身体症状を誘発しかねないと考えて、必要なはずの日常生活の活動や運動に自分で必要以上に制限や回避をしている行動などが挙げられる。
- 安全行動が形成する悪循環を同定し、どのように行動を変容していくかにいついて検討する。強迫症の反応妨害法に類似した技法である
- 破局的な認知の再構成
- 行動実験
- 再発防止