- 痛みには苦痛を伴うが、痛みは基本的には末梢からの刺激によって引き起こされることから、患者も治療者も痛みを訴える部分である組織に注目されがちである。しかし、痛みは主観的な感情情動体験である”頭(=脳)”で経験するものである。実際、痛みの強さは患者のおかれた状況や環境の要因によってしばしばその強度が変化する
- 神経解剖学からみた脳内の痛みの伝達系
- 患者群においてはVASにおいて健常者群に侵害刺激を加えた際よりも強い痛みが観察されたにもかかわらず、末梢からの痛みの主な中枢である視床の活動性は検出されなかった。一方、S1,S2,帯状回および運動野、補足運動野の活動が認められることが多かった。他方、健常者に機械的侵害刺激を加えると、視床、S1,S2,帯状回、小脳における活動性の亢進が検出された
- 視床 感覚の中枢
- 視床の機能変化のメカニズム(仮設)
- 動画を用いた痛みの仮想体験に対する脳活動
- 慢性痛を有する患者では痛みを脳が記憶し、再現し、繰り返して経験するような状態になっているのではないか
- 実際、神経障害性疼痛に限らず慢性的に痛みを有する患者においては、痛みに対する破局化傾向を示すことが多いことが最近強調されてきている
- いつも痛みのことを心配していたり、自分の痛みは悪くなると思ったり、治らないと思ったりなどの傾向が高い場合それ自体が患者を煩わせる要素になるということもある
- 脳内における認知機能の中で、不快な情動体験としての痛みの方が、識別的な感覚体験としての痛みよりも苦痛に関与し、患者の苦しみという側面からはより重要な問題であることが考えられる
- 今後の慢性痛の治療においては、痛みによる不快な記憶は止めようがないけれども、これらのネガティブな経験の繰り返しをさせない、あるいは問題にならないようにさせるような工夫によって、患者の人間としてのアメニティを向上させることが最も重要になるものと考えられる