慢性腰痛の脳イメージング

下和弘、池本竜則、井上真輔、西原真理、牛田享宏 慢性腰痛の脳イメージング ペインクリニック 2013;34(12):1639-1650

  • 脳活動部位(腰痛、自発痛)
    • 内側前頭前野、前帯状回、島(以上記憶や情動)、さらにそれらを統合する部位
    • 内側前頭前野∝自覚的な腰痛の強さ
    • 島∝腰痛の期間
    • 慢性腰痛と変形性膝関節症では、おなじ慢性痛であっても脳の機能的差異だけでなく、形態的な差異が生じている
  • 自発痛をパラメータとした腰痛の脳機能イメージ
    • 亜急性期 痛みの近くにかかわるような島、視床などで活動
    • 慢性期 痛みの情動に関わる内側前頭前野、前帯状回、島
    • 腰痛が持続した群では痛みの知覚にかかわる領域の活動はみられず、痛みの情動にかかわる領域の活動が増加し、報酬系の活動に有意な変化はみられなかった
  • 腰部に侵害的な熱刺激を加えた際の特徴的な反応として、側坐核の活動が慢性腰痛患者と健常者と異なることが報告されている
    • 慢性腰痛患者における側坐核の活動低下は、脳内の可塑的変化によって中枢性の疼痛抑制機構が十分に機能していないことを示唆している
  • kobayashi LBP matrix 前頭前野、補足運動野、前運動野、視床、島、後帯状回
  • 補足運動野、前運動野、視床、島、後帯状回は、実際に腰痛を発生させた場合に不活化される”LBP matrix”と共通していることから、腰痛経験者では、実際の侵害刺激がなくとも、視覚情報によってvirtual low back painと表現できる不快な情動体験を経験していることが示唆された
  • 慢性腰痛患者と健常者の示指および腰部に経皮的電気刺激を与えた際のsomatotopy(体性局在)を調べた結果、示指のsomatotopyでは慢性腰痛患者と健常者で大きな違いがなかったのに比べ、腰部のsomatotopyは大きく異なることが示された
  • 腰痛患者の中でも、疼痛行動をほとんど示さない群と、疼痛行動を強く示す群では腰部に触覚刺激を与えた際のsomatotopyに違いがあり、求心的な感覚情報処理能力の違いを反映しているのではないかと推察している