痛みの病態生理学 第16回

下和弘、池本竜則、牛田享宏 最近の知見から 大脳皮質から見た運動器の痛み 理学療法 2009;26(4):537-544

  • pain matrix S1,S2,島皮質、前帯状回前頭前野内側部
  • 変形性膝関節症の患者群では、圧痛点を圧迫刺激すると、痛みの出現と、視床を含む前述のpain matrixに有意な神経活動が観察されることがfMRI研究で明らかになってきた
  • 慢性腰痛患者においては、自発痛の強さをパラメータとして用いることで自発痛と関連する脳の部位を調べる研究が行われている。その結果、前頭前野や前帯状回といった記憶や情動に関与すると考えられている部分で脳活動が観察されている
  • 変形性膝関節症と慢性腰痛患者ではことなる脳活動パターンがみられた
  • アロデニアを有する患者群ではVASにおいて健常者群よりも強い痛みが観察されたにも関わらず、末梢からの痛みの主な中枢である視床の活動性は検出されず、S1,S2,帯状回(主に前帯状回)および運動野、補足運動野の活動が出現した
  • 手にアロデニアを有する神経因性疼痛患者に手掌が筆で触れられている動画をみせたところ、前帯状回と内側前頭前野の活動が健常者群に比べて亢進していることがわかった。
  • 近年のイメージング研究によれば、痛みの認知的側面と情動的側面との統合を司る内側前頭前野が慢性背部痛患者の自発的な持続性の痛みに関与していることが示されている。
  • 慢性疼痛病態下では脳の過活動に続発する萎縮が存在することが報告されている
  • 慢性疼痛患者では前帯状回や内側前頭前野などのpain matrixで機能的、神経化学的、解剖学的変化が生じており、これが自発的な慢性疼痛に関連していると考えられる
  • 慢性疼痛患者ではおそらく、過去に経験した実際の痛み刺激によってpain matrixの神経細胞に可塑的変化が生じ、その結果自発的疼痛を引き起こしていることが推察される