鈴木重幸 特集 痛み その世界 Sportsmedicine 2007 8月号 vol 93 p5-17
- まず、画像診断、つまりレントゲンやMRIなど画像でわかる変形や変性、たとえばヘルニアなど、確かに異常な形態をもっているけれども、それが直接痛みの原因でないことが多いということです。
- 関節痛は関節内からではなく、関節の周囲から痛みが出ている場合が多くみられます。結合組織、すなわち靭帯とか、筋肉を包んでいる筋膜など、そういったところに痛みのインパルスを伝える神経線維が分布しています。
- たとえば関節液の貯留、つまり膝に水がたまり腫れると、そこでは痛みの神経線維を刺激する化学物質の濃度が増して、それで関節の周囲を包んでいる関節包、これも結合組織ですが、そこに分布している痛みに関与する神経線維を化学物質が刺激して痛みが伝わる。だから膝が腫れると痛い。そこで水を抜くことは、腫れている原因となっている化学物質の濃度を下げることも目的の一つなので痛みは軽減され、膝はすっきりします。一方、「膝が痛い」とイッテも、関節の外、すなわち膝関節を保護する靭帯や膝関節を動かす筋肉や筋肉を包む筋膜など、膝関節内でないところから出た痛みがある場合も、「膝が痛い」という訴えになります。
- 今では、椎間板の脱出は下肢に重だるい感じや痺れを引き起こすことはありますが、痛みの直接の原因ではないとかんがえられてきています。
- こうした筋肉などが原因で痛みを発生することが非常に多いのも事実です
- 実験的に電気刺激により筋肉を持続的収縮にさせる。その時痛みを伝える神経線維を刺激する化学物質(ブラジキニン)の濃度を調べると、その化学物質の濃度が持続的収縮に増えるということがわかっています。
- ストレッチングは柔軟性を向上し、血流を改善することにより筋肉痛が軽減され、筋のリラクゼーションが得られ、動作の時にも無理のないパフォーマンスが発揮できることが考えられます
- 私が推奨している生体反応は、広汎性侵害抑制調節(individual noxious inhibitory control;DNIC)というものです。
- 元々痛みのある部位とは異なる部位に痛み刺激を与えることにより、一時的に元々の部位からの痛みのインパルスを抑制することができるというものです。(4分間たったら元に戻る)
- 痛みをコントロールしてから、その痛みが発生している部位をストレッチする
- 痛みの抑制
- 薬物以外の疼痛抑制法
- 非侵害刺激による脊髄後角における侵害性インパルスの抑制法
- 非侵害刺激という痛みを伴わないが気持ちがいい軽い刺激、お風呂、マッサージ、温熱療法、ラットの皮膚にブラッシング
- 温熱療法による局所の循環改善や発痛物質・痛覚増強物質の局所濃度低下による抑制法
- 局所への長時間侵害刺激による下行性抑制系への賦活法
- 広汎性侵害抑制調節(DNIC)を利用した抑制法 脳幹部からの抑制系
- スタティックストレッチによるIb抑制法
- スタティックストレッチ 筋からの抵抗を感じたところで静止すると、筋腱移行部に多く存在するといわれるゴルジ腱器官という筋肉の緊張を感知する受容器が働き、Ib神経線維を興奮させる。Ib線維は脊髄の介在ニューロンを介することにより、運動神経線維の活動を抑制するため、結果的に筋肉が弛み、安静時の筋放電が低下します
- 筋肉痛が存在する部位は筋緊張が亢進しているので、かならずと言ってよいほど硬いのが特徴です。これを筋硬結といいますが、すべての筋硬結が痛みを出現していることはありません。患者さんや選手が痛み訴える部位で筋硬結をみつけることが重要で、その部を圧迫することにより、痛みが再現できます。圧迫して再現した痛みと患者さんが訴える痛みが同じである必要があります。
- 筋を短縮することにより、筋膜などの結合組織に機械的な刺激が加わるため、ポリモーダル受容器が興奮することによると考えられます。