頭痛めまいしびれの臨床

頭痛・めまい・しびれの臨床―病態生理学的アプローチ

頭痛・めまい・しびれの臨床―病態生理学的アプローチ

p105-142 第三章 しびれ

  • しびれのもつ3つの意味
    • 知覚鈍麻
    • 異常知覚 ジンジン、ビリビリ、ムズムズ、チクチク、ピリピリ、ズキズキ、等
    • 運動麻痺:(急性、亜急性)
  • しびれの病態生理
    • 太い線維(Aβ)は触覚、細い繊維(Aδ、C)は痛覚を伝達
  • 触覚・痛覚間の抑制機構
    • 触覚を伝達する太いAβ線維は、痛覚を伝達する細いAδ、C線維を、脊髄や視床のレベルで常時抑制している。掻くことは触覚系を刺激することになり、従って掻けばかゆみを含めた痛覚系に抑制がかかることになり、痒みが軽快する
  • ジンジン・ビリビリの病態生理
  • 末梢神経によるジンジン・ビリビリ(正座の時)
    • 正座をすると膝以遠の血行障害
    • 血行障害によりまず有髄線維が機能を停止し、触覚が低下
    • 脊髄での触覚線維による痛覚線維(Aδ、C線維)の抑制が消失(脱抑制)
    • この時点でslow painを伝達する無髄線維(C線維)の機能は傷害されていないので、痛覚線維を流れる活動電位は脊髄で何の抑制もうけずに高位中枢へ上行することになって、ジンジン・ビリビリというslow painが感じられる
    • やがて運動神経線維(有髄線維)も機能障害をおこし、脚が麻痺する
    • 最後の無髄線維も機能を停止し、ジンジン・ビリビリというしびれも消失し、脚は全く無感覚になる
    • 正座を説いた場合には上記の逆に辿る
  • 中枢神経障害によるジンジン・ビリビリ
    • 視床出血・梗塞の患者では一過性の麻痺が軽快したころから(通常3−4週)麻痺側の身体半側に痛みが発症持続することが以前より知られており、視床週”thalamic pain”とよばれています。これは必ずしも痛みでなく、ジンジン・ビリビリというしびれであることが多い
    • 脊髄レベルで触覚系が痛覚系を常時抑制しているように、視床レベルでも触覚系(VPL核)が頑痛系(髄板内諸核)を乗じ抑制していることが臨床的に推定される
    • 視床の出血や梗塞はVPL核を中心に発生しやすいので、最初は周辺部の浮腫の影響で、運動麻痺がおこると同時に、頑痛系の核群も機能停止するが、浮腫の消退と共に、運動麻痺が回復する一方、頑痛系が脱抑制による自発痛もしくはジンジン・ビリビリというしびれを発生してくる
  • チクチク・ビリビリの病態生理
    • 触覚を伝達する神経線維は有髄線維のために、循環障害には弱いものの、軸索が髄鞘で保護されているために、薬物のような化学的障害には強く、なかなか局所麻酔の影響を受けません。
  • 異常知覚の病態生理
    • 体性感覚神経線維:太い線維:触覚・振動知覚・位置覚

         :細い線維:痛覚・温度覚

    • 太い線維(触覚)は細い線維(痛覚)を常時抑制
    • 痒み(軽い痛み)は掻けば(触覚刺激で)軽快
    • 太い線維(触覚)障害→細い線維(痛覚)で脱抑制→軽い痛み(ジンジン・ビリビリ)
    • 細い線維(痛覚)刺激→神経痛(30秒以内の発作) ビリビリ・チクチク(持続的)