牛田享宏、池内昌彦、芽原泰子 p92 痛みの訴えが最も多い整形外科では
- 運動器の痛みであっても最終的には脳が痛みを経験、記憶している。痛みに対する耐痛域には個人差があり、精神的、社会的な要因などで、それらが複雑にからみあって痛みとして表現されることを理解しておく必要がある
- 痛み行動は痛み刺激がなくても、報酬を期待して、痛みと関係なく誘発される。痛み行動には中立的であることがケアの基本である。
- 現時点では変形性関節症にみられる痛みは骨のC線維によるものよりはむしろ関節周囲組織を介した痛みであるという見解が多い
- Apkarian 慢性腰痛の患者においては痛みに伴って大脳内の前頭前野の過剰な活動が起こり、同時にその部位の脳の萎縮が引き起こされている
- 椎間板ヘルニアの大きさが痛みの強さに直接関係しておらず、ひいては圧迫そのものが痛みの原因にはなっていないことを示唆
- 圧迫だけでは痛みは誘発されず、圧迫にともなう神経周囲の炎症、圧迫部周辺に遊離されたケミカルメディエータ等によって痛みが誘発される
- 筋痛のメカニズム 障害のもととなった原病変部位からの障害信号が脊髄後角に伝播された決壊、インターニューロンを介してγニューロンが刺激され筋紡錘の興奮性が上昇したため、続発性にアルファモータニューロンの持続的興奮と筋の収縮がおこる。その結果筋の硬結等が生じ、局所の血行が不良になることで、筋内ポリモーダル受容器などが刺激されて持続性の筋肉痛がおこる。
- 患者の訴える痛みは原因病変があって、そこに心理社会的因子が加わり、痛みの反応を増強させ持続させている
- 慢性疼痛患者の場合、痛み行動に対して患者の言動を受け止め、慰め、援助するという対応は間違った対応になることを十分に考慮した上で、患者の訴えを傾聴する必要がある