木村宏之 高齢者の心因 老年精神医学雑誌 2016;27(10):1037-1045
- 1952 軍部の主導でDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-I)が出版された。当時アメリカで全盛だった力動精神医学の考え方が取り入られた
- 1968 DSM-II 神経症は引き続き用いられ、ヒステリーは解離ヒステリーと転換ヒステリーに分割されて診断された
- 1980 DSM-III 症状記述的を中心とした操作性診断基準を採用 力動的な理解を含む神経症という用語/概念を用いなくなった
- 転換ヒステリーは、身体表現性障害という診断名に変更。
- 1987 DSM-III-R 身体症状は、明らかな心理社会的ストレッサ―と症状の出現あるいは悪化の時間的関係を認めればよくなった。このように力動的な色彩は段階的に薄まり、「心因」はほぼ除外された
- 2000 DSM-IV-TR 多軸診断(I軸:精神疾患、II軸:パーソナリティ障害/知的障害、III軸:身体疾患、IV軸:(発症時の)環境的問題・心理社会的問題、V軸:全般的社会機能(Global Assessment of Functioning;GAF))が採用されて、患者を包括的に理解することになった。その多軸診断のなかで心因は形をかえて登場する
- 2013 DSM-5 身体表現性障害は身体症状症という診断名になった。そして、「(変換症は除き)身体症状に対して医学的説明ができない」ことが、定義から除外された。また医学的に説明できないことよりも、「苦痛を伴う身体症状とそれに対する異常な思考・感情・行動」に主眼がおかれたことがある。多軸診断は中止され、1-III軸はまとめて記載、IV軸はICD-10-CMを用いて心理社会的・環境問題に関する内容をコード化
- 「心因」は、「説明のつかない」神経症の原因であったが、そこから「心理的要因」という色彩をより強めた。そして、「心理的要因」そのものの評価は、精神力動的な「主観的理解」から客観的評価コードによる「客観的理解」へとその軸足をうつしつつる
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