総合病院心療内科での森田療法の実践

太田大介 総合病院心療内科での森田療法の実践 心身医 2015;55(4):346-351

  • 不定愁訴患者のとらわれを森田のいう思想の矛盾に照らして理解すれば、かくありたいという自分像と現状のかくある自分との間を埋めているのが各種身体症状といえる。
  • 患者の身体症状そのものではなく、症状の背後にあるとらわれの病理を治療対象とする森田療法の視点は心身症一般、特に多彩な症状を示す不定愁訴患者の治療において有効である
  • 治療経過
  • 治療者は、患者のこれまでの主婦としての働きをねぎらった。
  • 患者の中の、こうありたい自分、森田療法でいう、かくあるべき自分と、活動性の低下した現在の自己像、すなわちかくある自分とのギャップに悩んでいるという理解を共有していった
  • 森田療法における、症状はあるがままに受け止めて日々の生活を本来の彼女らしく暮らしていくという方向で、症状は残っているけれども散歩に出かけ、可能な範囲で友人との会食にも参加し、座ることなく立ったままでもカラオケを楽しむよう指導していった
  • 考察
  • 森田療法では、小乗そのものではなく、その症状の背後にあるとらわれを治療対象としている
  • 症状ではなくとらわれの機制に焦点を当てる森田療法のアプローチは不定愁訴患者の治療の本質をとらえている
  • 精神相互作用は、人がある病態、不安、恐怖、観念などに注意を集中し、また起こるのではないかと予期、恐怖すると、ますますそれに注意が集中し、その病態、身体感覚が強く感じられ、その結果さらにそれに注意が集中するというものである
  • とらわれの背景を、森田療法では、患者の健康への執着など、強い生の欲望がマイナスに働いた結果ととらえている
  • 不定愁訴患者は一般に生の欲望が強い傾向にあり、身体症状という形で死の恐怖が現れているものとかんがえられる
  • 筆者はこのような患者に対して、不定愁訴患者を広く生活習慣病としてとらえて指導している
  • 身体症状は生活習慣を見直しなさいという身体からのメッセージであるという理解である