井関雅子 家事労働と家庭生活の主婦ストレスに対する支持的カウンセリングの有用性:腰椎術後慢性会陰部痛の1症例 ペインクリニック 2015;36(1):87-95
- 医師 年齢とともに、家事をこなすのが、きつくなるのは、どなたでも同じです。30代、40代の時と同じようにはいきません。もっと、手抜きをしてみてください。
- 患者 家事はどんなに大変でもきっちりとこなさいなと後ろめたさを感じます。
- 家庭内の環境変化(夫が退職、息子も同居)やストレス(夫と息子の不仲)、主婦業を若い時代から同じペースで行っていることの心身疲労(過活動の可能性)があると判断した
- 医師 私の治療を受けたいと考えているならば、私の意見も少しは受け入れてくださいませんか」と、筆者の感情を移入した接し方が適切であったかどうかは不明である
- 医師 女性の体と心は、年齢とともに変化していきますから、その時、その時の自分のと上手くついきあいましょう
- コメント 細井昌子
- 初診時に患者が話したい内容は、治療者が聴きたい内容と大きく異なることがありますが、この症例でも、まずていねいに傾聴して折られたことが、その後の良好な展開に導かれたと思われます
- 「私の専門的な治療をうけたいのであれば、こちらの意見も少しは受け入れてくださいませんか」と明言されて、母性と父性をバランスよく織り交ぜて対応されているところがさすがです
- エチゾラムから長時間作用型の他の抗不安薬(ロフラゼプ酸エチルやジアゼパム)への移行
- 家庭内の交流不全の状況をモニターし、本人の気持ちを言語化していただき、機能的な痛みに混在している夫と息子の不和に伴う患者の深い情動の発散を行っていくことが大切
- 難治化する場合は、患者本人に愛着形成の問題があり、治療者や家族との間の対人交流上の問題が起こってる場合や、家庭内外の問題が付加悪化している場合があげられます
- 患者は「家庭内のトラブルが自身の痛みに関連している」という発想が思い浮かばないことが多い
- 長年家事労働を行っている症例では、朝から夕方まで固定した作業を一通り終わりかけるところから痛みを強く感じる症例も多く、意欲と注意制御の変化のメカニズムで、痛みの不快感が夜に増大することがお多いようです。
- 特に「ーーを終わらせたい:という気持ちで家事を頑張っておられる場合は、日中は家事の段取りに意識が集中することで、ノルアドレナリン作動系の下行性痛覚抑制系が機能し、痛みを感じにくい状態になっていることが想定されます。その段取りが終わり近くになると、朝から一気に頑張っているために疲弊した心身の不快感が寝る前に押し寄せる痛み増悪パターンも考えられそうです