ペインクリニシャンによる認知行動療法的な治療が有効であったエチゾ

洪淳憲、川端真仁、大石正隆、荒木ひろみ、上野由衣、河西稔 ペインクリニシャンによる認知行動療法的な治療が有効であったエチゾラム依存症の1症例 日本ペインクリニック学会誌 2013;20(1):48-51

  • 認知行動療法的手法 Aaron T. Beck
    • 1)体調と気分のチェック 2) アジェンダ(話題)の設定 3) 自動思考の把握 4) 中核信念の把握 5) ホームワーク(次回の診察までに患者がやっておくべき課題)の設定
  • 堀越モデルを採用し、明らかになった自動思考、中核信念における”認知のゆがみ”を患者自身に認識させ、それらをロールプレイなど適宜用いて修正していくことに努力した
  • その結果、認知行動療法的な治療を初めて2ヶ月ほどして、自動思考としては”痛いとすぐ薬をのまなくてはいけない”どいうこと、さらに中核信念として”自分はわがままに育った”ということを患者本人が認めるようになった
  • 入院中の痛み日記では、仕事と家庭での身体的ならびに精神的ストレスが痛みを増悪すること、痛み発作片不安がさらに痛みを増悪していること、痛みに対するセルフマネジメントも必要であること、などの記載がみられた
  • 認知のゆがみを修正すべく、身体的疲労を軽減するためにはどのようにすればよいか、なぜ家庭での精神的ストレスが痛みを増悪すると思うのか、痛みのセルフマネジメントはどのような行動をしたらよいのか、などの質問事項を設定し、ソクラテス式問答を繰り返しながら、われわれと患者本人が協働して痛みの軽減を図っていくよう努力した
  • 認知行動療法は痛みのそのものではなく、その症状に影響を及ぼしている行動、認知、感情、環境などにターゲットをあて、それら因子を変化させることにより、間接的に痛みの症状を改善させることが目的とされている
  • 認知行動療法では、”ゆがんだ認知”を患者本人が理解し修正していくことに努めるが、そのためには自動思考や中核信念の把握が必要である。
  • 堀越モデルはこの自動思考や中核信念の把握のための一方法として比較的導入が容易である
  • 痛み日記
    • 書くことで、痛みだけでなく、自動思考や中核信念などの認知行動療法に関する諸因子を視覚化することができた
    • 視覚化することで情報を医師と患者で共有するすることができ、問題点が把握しやすくなると同時に、痛み行動の制御目標の設定が容易になった
    • 患者にとっては、「書く」という行動が、自らの痛みと、痛み行動を「認知する」ことの手助けになった
  • 認知行動療法
    • 治療が構造化していること(介入する全体の診察回数や診療計画をつくる、毎回の診察をだいたいおなじような順番ですすめる)
    • 認知行動療法に導入するモデルを患者に提示し、それが患者にあうかどうかをモニターしながら介入していくこと
    • 治療過程を第1期、第2期などに分け、それぞれの期にあった到達目標を設定して治療手技を導入していくこと
    • 他施設の専門医の指導的相互介入を行うこと、が原則