ひとりで苦しまないための「痛みの哲学」
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- 第一章
- 「この痛みは何なのだろう」とまったく意味付けできないときに、その感覚はいつまでも痛み続ける。どうもその物語化・意味化との関係でこの慢性疼痛を捉える必要がありそうだということまでは臨床の現場でわかってきました。
- フロイト 死の欲望
- 患者たちは痛みを繰り返し想起したり、夢に見たりして、痛みの体験に立ち返ろうとする。彼らは明らかにその体験に執着しているわけです。ネガティブな体験であるにもかかわらず、そこから逃れられなくなり、むしろあえてそこに向かって逃げ込んでいくようにさえ見える。フロイトはそれを不思議に感じ、人間にはあえて苦痛に向かっていく傾向性があるということを知った。それを死の欲望と呼んだ
- 名づけたり物語にすることで癒せない傷 マプラー 新しい傷
- 慢性疼痛のようにどこを診ても、原因がわからず、治らない傷がある。そのときに癒やす一つの方法として、それを意味付け、物語化をおこなう方法があるのです。
- 慢性疼痛に対するサポート 痛み随伴サポート、社会的サポート
- 依存症回復者のグループの言葉 痛みって孤独が好きだよね
- ダルクでは、自分の体験を話すがそれに応答してはいけない。「わかった」という反応を示さない他者がそこにいるということが、逆説的に共感される
- 知識を獲得する前提条件として、「この先生は信頼できる」と感じていたことが重要
- 旧約聖書 ヨブ記 ヨブの痛みの話
- 生活の最も基盤にある身体の作動に対して信頼を失った慢性疼痛という状態
- catastrophizing Albert Ellis
- 第二章
- 予測誤差は最近の研究では痛みの理由になっている
- 今の高齢者は変化していく自分の身体の予測誤差を受け入れることができない人たちですからね
- 第三章
- 予測からのずれで始まった痛みが、もう一回予測からのずれでもどるという感じ
- 覚醒とは予測からのずれをとりつづける状態
- 聞き取りの中で、慢性疼痛の時は「親切が痛い」と表現された方もいます。「感情が痛いからやめてください」とも言われましたが、感情に対して自分の感情が引き出されてしまって、それが痛みを増幅してしまうということがあるようです。
- 痛みは究極的には、人を今ここの一点に閉じ込めてしまう、つまり孤立させてしまうものだということでした
- 第四章
- これは薬物依存の当事者のケアサポートを行っている方と話していて出た意見なのですが、依存症の方の中には体の痛みにすごく困っていて、その痛みを緩和するために薬物を使用することが止まらない方もいる。生活基盤だとかお金だとか人間関係だとか痛み以外にもたくさん問題を抱えているにもかかわらず、それは本人にはあまり問題だと解釈されていなくて、もちろん痛みでも困っているのとは思うのですが、痛みさえ解決すればほかも解決するのだと考えている方もいる
- pain catastrophizing scale
- 「どれくらい本人が痛みが全てだと思っているか」を測るものなのですね。痛みさえなければ私の人生はハッピーなのに、とかいうように何でもかんでも痛みのせいにしている度合いを測るスケールです。これが慢性疼痛の人の予後をよく予測する。「私の人生はこれのせいでだめになった」というように、もっといろいろな要因が絡まっているのだけれど、痛みだけで散々なものになってしまった、というふうに感じていることの度合いを診るスケールですね。