篠原仁、北原雅樹 症例から学ぶ慢性疼痛 臨整外 2013;48(11):1101-1106

  • 生物医学モデル 痛みには生物医学的原因(たとえば急性虫垂炎や、外傷による骨折など)が必ずあり、その原因を物理的治療法(手術や薬物療法など)で除去すれば痛みは必ず寛解し、いたみの寛解は患者の機能障害の減少に直結するというある意味ごく当たり前の考え方である
  • 生物心理社会モデル
  • 国際疼痛学会では、痛みは「組織の実質的あるいは潜在的な傷害に関連するか、またはsのような傷害を表す言葉で表現される不快な感覚・情動体験」と定義されている。侵害刺激はすべて、各個人の内的プロセスを経て、痛み行動として外界に表出される。すなわち、疼痛はあくまでも主観的な体験であり、患者本人以外の他者からは痛み行動を捉えることしかできない
  • 明らかな生物医学的原因の存在する急性痛とは異なり、慢性痛においては組織損傷の関与はほとんどの場合は少ない
  • 慢性疼痛では、生物・心理・社会的因子が複雑に混在している場合も多く、治療に難渋した場合には特にこのことを踏まえて捉えていく必要がある
  • 多くの医療者が陥りやすい間違いは、急性痛に有効な治療を慢性痛にも有効だと仮定して行ってしまうことである
  • 目指すゴールが「痛みを抑えること」でなく、「患者のADLやQOLを向上させること」に留意する。
  • 治療の最終目標は痛みを取り除くことではなく、痛みとは無関係にADL/QOLの向上を目指すことである。このことを、治療開始前に、まず患者との間で共通の認識としておく
  • 患者自身の痛みに対する生物医学モデル的な捉え方を生物心理社会モデルへと移行させることも必要である
  • このモデルでは治療の主体はあくまでも患者自身であり、医療者は治療のサポートをしているにすぎない