小形洋悦 筋肉痛に対するマニュアルセラピー 理学療法 2001;18(5):485-492
- 疼痛のある筋肉には早期より筋力低下と筋萎縮が生じる。疼痛が軽減しても筋萎縮が改善しなければ、関節の不安定性が増し、関節構造への負担が増大する。その結果、関節痛、筋肉痛の再発という悪循環が生じる。したがって、筋力低下、筋萎縮を起こしやすい筋に対する選択的アプローチは、筋肉痛に対して重要な治療法の一つである
- 関節の近くに位置する深部の筋は関節の安定を保つ働きをする。これらの単関節筋はタイプI線維を多く含み、持久力に富む。その主な役割は動きを生み出すことではなく、関節の安定性を高めることである。関節に適度な緊張を与え外部から関節を支持することで安定性を高める。
- 急性の腰痛患者では反射抑制、疼痛抑制、廃用性萎縮のために多裂筋の萎縮がおこる
- 腰痛患者では脊柱筋の筋疲労が起こりやすい
- 腰痛患者の多裂筋では脂肪組織の割合が増える
- 慢性腰痛患者では常に多裂筋の内側部が選択的に萎縮
- 多裂筋の筋萎縮は早い場合に24時間後には明らかに左右差として現れる
- 多裂筋には固有感覚受容器が豊富に分布しており、関節包や靭帯からの感覚フィードバックと強調して分節毎の安定性を保ち、脊椎の支持に働いている
- 筋肉痛には早期より筋力低下と筋萎縮が合併する。急性期の腰痛患者では反射抑制、疼痛抑制が作用し、24時間後にはすでに筋萎縮が現れ始める例もある。筋萎縮にはタイプI線維を多く含む深部の単関節筋に選択的に出現する。関節の安定性を保持し関節の保護に働く深部の単関節の萎縮は、さらに関節構成体の微小損傷をもたらし、慢性的な疼痛や機能障害に移行する。このような悪循環を予防するには、関節固定筋群の選択的治療法が有効である