プライマリケア 地域医療の方法

プライマリ・ケア‐地域医療の方法‐

プライマリ・ケア‐地域医療の方法‐

  • 彼/彼女らは腰痛とともにある。長引く腰痛は生活化され、そうあることがやっかいであるにしても避けられないこととして納得されて言葉どおりに慢性化するのだが、不思議なことに慢性疾患という医学的な言葉はこの際大きな意味を持たない。老化という言葉とそれが示唆する物語に変換されているのだ。このような認知行動の変化(内在化)をもって彼/彼女にとっての慢性疾患は発生し、同時に慢性疾患という言葉は解体され、現実としての生活の困難さとそれと折り合いをつけながら生きるという新たな生活の物語に置換される。この時、私(医師)も彼/彼女と同期するように変容を来していることに気付く。「残った年と自分の体を大切に使おうね。お孫さん、あり難いね」と、応える。それはあきらめというのではなく、新たな生き方への共同参画とも言えるのだ。
  • それよりも大事なのはね、Fさんの腰痛を起こす原因を自分の生活のなかで発見することなのだ。曲がった腰は戻らない。だけど痛くする原因は必ずある。例えば、Fさんはよく火曜日に痛くなるでしょ?土日になにか、やっていない?旦那さんを風呂にいれている?一人で?一緒に入って、洗ってあげているの?ほら、それだもの。腰の根元の筋肉と膝の前の筋肉が痛むんだよ。Fさんに本当に必要なのはね、介護サービスと入浴サービスだよ。あと介護のやり方と、旦那さんの感謝の気持ちだね。うん。これから手続きの仕方を教えるよ。そろそろ、ちなみに芋洗いの時の体の使い方だけど、これ芋洗いの研究っていってね・・・
  • 診断名は、その言葉自体が病態を反映しているもの(急性肝炎=肝臓+急性炎症、湿疹=表皮+炎症)と、そうでないもの(テニス肘、脊柱管狭窄症)があって、混ざっているから混乱する
  • 基本的に前医は否定してはいけない。明日は我が身だからね。
  • 小胸筋 前胸部痛、杖をつく高齢者に多い
  • 筋痛症の治療
    • 認知
    • 筋痛自体の局所治療および内服薬治療
    • 筋痛の原因となっている生活背景への介入
  • 構造異常は疼痛の原因の全てではなく、「多くの原因のうちの一つ」であり、構造+α(筋痛症、炎症など)と考えることが重要である
  • 五十肩 診断名ではない。広義には「急性外転時疼痛」という症状名で使用されている。しかし、狭義の意味は、関節包炎による凍結肩。つまり全可動域障害を起こす。この患者は外転時に特に強い疼痛であり、関節外症状を疑わせる。動作の特徴から、棘上筋や棘下筋の可能性が高そうだ
  • クレーム、批判は有難く受け取ることが大事。それをきっかけに何ができるかが重要だ。