花岡一雄 痛みの臨床1 シリーズ痛みの臨床によせて 日医雑誌 2009;138(1):83
- 長時間にわたって痛みに苦しんでいると、痛みが脳内に記憶されることになり、元来の病気が治癒したとしても痛みだけが取り残されることがまれではない
- 病状は類似であるものの、痛みの性質や程度は患者によってまちまちであり、本人にしか分からない。そこに疼痛治療の難しさがある
川真田樹人 痛みの臨床2 痛みの発生機序 日医雑誌 2009;138(1):84-85
- 痛みの種類 侵害受容性、神経障害性、心因性 および急性と慢性
- 痛みは組織障害に伴ったか、あるいはその可能性がある場合や、そのような障害があるとのべられる不快な知覚、あるいは情動の体験である
- 痛みには知覚と情動の成分がある
- 痛み刺激を受け取る痛みの部位、強さなどを認知し、過去の類似の痛みを想起する。これが知覚としての痛み
- 痛みを受容したときの感情や不安に影響され、さらに過去の痛みによる情動体験の影響もうけ、痛みの強さや不快度が決定される。これが情動としての痛み
- 感覚、情動に関連する経路が、それぞれ独立して末梢神経から脊髄を経て脳に至り、両者が統合される。
- 一方、情動などの脳の活動が、脳からの下行性ニューロンの活動を変化させ、痛みの強さを抑制あるいは増強する
- 痛みが長期間持続している慢性疼痛患者では、より上位中枢の関与が大きくなり、当初の痛みの機序は不明瞭となる。したがって、慢性疼痛患者では、痛みの機序を想定して治療するよりも、むしろ患者のもつトータルの痛みを共有する姿勢が治療には重要と考えられる。