住谷昌彦、宮内哲 痛みのメカニズム 痛覚と痛み認知 OTジャーナル 2013;4(1):10-15

  • 疼痛ー生理的疼痛、病的疼痛
  • 侵害受容器 高閾値機械的侵害受容器(Aδ線維、有髄、30m/sec以下、鋭い一次痛)、ポリモーダル受容器(C線維、無髄、2m/sec以下、局在の不明瞭な遅発性の灼けつくような二次痛)
  • 脊髄後根神経節
  • 脊髄後角 後角灰白質(I~X層)、侵害受容ニューロンは主に第I,II,V層に分布、central sensitizationの場として重要)
    • 神経障害性疼痛では触刺激等の非侵害性情報を伝える線維(Aβ)が軸索発芽を起こし、その線維を第Ii層に伸ばす減少は、触覚によって侵害受容ニューロンが興奮することによって痛みを引き起こすアロでニアを説明し得る
  • 脊髄視床
    • 外側脊髄視床路 痛覚の弁別的側面(侵害刺激に部位の認識)
    • 内側脊髄視床路 情動的点認知的側面(痛みに伴う不快感や、過去に経験した痛みと比較して現在の痛みを認知する)
  • 視床 体部位再現地図あり
    • 経験的に温冷覚の障害が著しい際に視床痛が発症しやすい
  • 大脳
    • 体性感覚野 S1では神経障害や脊髄損傷だけでなく、慢性腰痛のような病態でもその局在が書き換えられる(reorganization)
    • 島葉 嫌悪学習とその回避にかかわる情動系の回路の一部であることから痛みの感情や反応に関わっている
    • 帯状回扁桃体前頭前野
      • 帯状回 痛みに対する情動的側面。侵害受容とそれに絡む記憶、刺激に意味付け、注意、そして情動行動・自律神経系活動・逃避行動の運動コントロール等、幅広い機能に関与
      • 前頭前野 痛みに対する注意や痛みの予測と強い関連
  • 知覚ー運動協応の破綻による病的疼痛の発症機序
    • 切断肢や脊髄障害麻痺肢は運動が起こらないために感覚情報のフィードバックが欠損しているため、運動企図に続く感覚情報フィードバックとの間に解離が起き、知覚ー運動ループの整合性が得られていない状況と考えることができる
    • 知覚−運動ループの協応関係が破綻した四肢についての感覚情報を脳へとフィードバックする際には、その四肢に関する正しい視覚情報(映像)を入力することが知覚ー運動ループの協応関係を再統合するために最も効率的な方法である。鏡療法
  • 終わりに
  • 患者の訴える痛みが治療抵抗性の際にその説明として心理的要因や社会的要因を後付けして解釈するような姿勢がしばしば見受けられるが、これは誤りであり、あきらかな組織の障害の有無に関わらず、患者の痛みの訴えには常に生物心理社会的機序が含まれていることが理解されなければならない